パウエル氏自身が座右の銘とし、さらに1989年の雑誌インタビューで紹介されて以来、部下などによって20年以上世界中で語り継がれてきた教訓が13か条の自戒のルールである。
例えば、リーダーはどのような困難な状況においても楽観的な姿勢を保つべきだという。なぜなら「なにごとも思うほどに悪くなく、翌朝には状況が改善しているはず」だからである。実際、部下は上司と同じ感情を抱くものなので、上司が状況を改善できると信じていれば部下に良い影響を与え、結果的に事態を改善することができるのだ。
また、「自分の人格と意見を混同してはいけない」ことも大事である。さもなければ、自分の意見が却下されたとき自分も地に落ちてしまう。このことは、熱心に議論を行わないということではない。部下は、常に本気でリーダーに反論し、議論を尽くさなければならない。だが、決定が下されたら、それまでの自分の立場を忘れて、決定に忠実に従わなければならないのである。意思決定とは、リーダーがそれまでの情報をまとめ、適切な回答を導き出すものであるからだ。
また、リーダーとして、何かうまくいったとき、その功績は、組織の底辺に至るまで全体のものとしなければならない。人は、他人の役に立っているという実感や他人からの承認が必要なのだ。パウエル氏の尊敬するエマソン将軍は、炎天下の中、自身の退官式に整列してくれた兵士に向かって全士官たちを敬礼させた。自分の成功は自分の下で働いてくれた兵士たちの功績だと心から示したのだ。感動的だった。大切なのは気持ちを表す行動なのである。
「君はよく働くね。あしたもおいで」。これは、パウエル氏が初めてアルバイトに雇われたときにかけられた言葉だ。その時、パウエル氏は14歳。勤勉なジャマイカ人の移民2世として、ベストを尽くしたことで得られたチャンスだった。このようなことはその後も度々起こった。ペプシ工場の清掃夫からそれまで白人しか働いていなかった瓶詰機械の仕事に昇進したとき、准将として低評価を受けた際には上司の上のリーダーによってさらに難しい要職への転機を得られたとき、もそうだった。
パウエル氏は仕事についてこう振り返る。「常にベストを尽くせ。見る人は見ている」と。パウエル氏は、仕事がどれほど難しくても、仕事や上司、職場環境、同僚がどれほど嫌いでも、常にベストを尽くしてきた。上司と自分の優先順位が異なるときでも、上司と争うことはせず、常に求められた仕事をできるだけ早く、きっちりとすませるように心がけた。上司を早く満足させることで自分が優先したい仕事もできるようになるからだ。
国家安全保障担当補佐官、統合参謀本部議長、国務長官と政府の要職を歴任した際も、最初のアルバイトのときと同じ姿勢で望んだ。結果的にパウエル氏は、プロンクスの移民2世から米国の国務長官まで登り詰めたのだ。
リーダーとは、常に問題を探して歩き、気付いた問題を解決しなければならない。問題に遭遇したら、じっとこらえ、また動き出す。
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