叱られる力

聞く力2
未読
叱られる力
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叱られる力
出版社
文藝春秋
出版日
2014年06月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

叱られるのは怖い。叱るのは憂鬱だ。多くの人がそう思っていることだろう。

でも、試しに本書を読んでみてほしい。

本書『叱られる力』は、著者の大ベストセラー『聞く力』に引き続き、コミュニケーションへのヒントを与えてくれる1冊だ。アガワさん(と、本文表記にならい、また、気さくなお人柄のイメージからも、あえてこのように呼ばせていただきたい)が折々に出会った人たちとの出来事や意見交換、また、「叱られ続けて60年」という自身の体験を語っている。

部下をうまく叱れないと悩む女上司、レストランで騒ぎすぎて叱られてしまったとき……など、身近にいそうな人やありそうなシチュエーションが多く登場するため、自らの日常も重ね合わせやすく、引き込まれてゆく。伊集院静氏、泉谷しげる氏、父親の阿川弘之氏ら、著名人のエピソードも興味深い。テンポよく、ふふふと思わず笑ってしまうようなユーモアもたっぷりだ。楽しく読み進めるうちに、職場の人々や、家族の顔が思い浮かび、叱り叱られることも悪くないと思えてくる。

また、アガワさん本人に関しては、「叱る」より「叱られる」エピソードが中心だ。「叱られる」ことは、コミュニケーションにおいて受信する側のことだ。前著『聞く力』も「聞く」という受信する力についてまとめたことが、今の時代に評価されたのではということだが、少なからず「叱られる」ことも、著者の豊かな受信力が発揮された結果なのだろう。柔道の受け身をとるように、うまく「叱られる」ことで、「お叱り」が活きるのだなあ、と感じさせられた。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

阿川 佐和子
1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部西洋史学科卒。8年から『情報デスクToday』 のアシスタント、89年から『筑紫哲也NEWS23』(いずれもTBS系)のキャスターに。98年から『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)、11年から『サワコの朝』(TBS系)にレギュラー出演。『ああ言えばこう食う』(檀ふみ氏との共著、集英社)で講談社エッセイ賞、『ウメ子』(小学館)で坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』(新潮社)で島清恋愛文学賞を受賞。「週刊文春」の「阿川佐和子のこの人に会いたい」は連載1000回を超えた。12年『聞く力』(文春新書)が年間ベストセラー第1位に。

本書の要点

  • 要点
    1
    叱り、叱られ慣れない人が増えている。叱る方はよけいに覚悟がいるご時世だ。でも、一回だけ叱る、いくつかの点に気を付けて叱る、などコツはある。
  • 要点
    2
    著者本人は、叱られ続けて60年。振り返ると叱られて身についたことはたくさんあるし、自分にとっての「怖い存在」のおかげで、自制心をもつことができているとも思える。
  • 要点
    3
    叱られる方にもコツはある。落ち込んだ気持ちを引きずらず、寝たり、人に話して発散したりする。叱られるとき、言い訳はしない。叱られたことをネガティブな経験にせず、自分のたくわえにしていける叱られ方がある。

要約

叱る覚悟

叱り方は一回だけ
macrovector/iStock/Thinkstock

アガワさんが聞いたところによると、近頃、後輩を叱れない人たちが増えているらしい。へたに叱りつけて過度に落ち込ませては面倒だし、などといろいろと気を回しているうちに、タイミングを逃してしまう。ややもすればパワハラと言われてしまうこともある。

若い人たちも叱られ慣れていないらしく、怒られるとびっくりして泣き出す人もいるという話だ。新人の男性社員に「もっと元気よく挨拶をしなさい」といったら、出社しなくなってしまったというケースもあるのだとか。

だが一方で、何も注意されないと、若手はこれでいいのだと思って仕事をするせいで、良くない状態がなかなか改善しなかったりもする。

叱り、叱られ慣れなくなったせいで、世の中の風潮は「誉めて育てる」方向に偏ってしまったのかもしれない。

ある女性社長は、「今は誉める技術のほうが盛んに取り上げられるけれど、私は誉める前にまず叱り方が問題だろうと思うんですよ」といったという。

彼女は、叱るときのルールを自らに課したそうだ。「叱るのは一回だけ。何度もしつこく叱らない」。

その信念をもって部下と向き合うのだが、ドキドキするし、叱ったあと、眠れない夜もあるという。今の世の中、叱ることは、なかなか難しいことになっている。

見事な叱り方
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

あるレストランで、アガワさんたちは食事をしていた。そこへ、とてもうるさい客がやってきた。6~7人の男女のグループで、ときどきは自分たちの会話が聞こえなくなるくらい騒がしい。なかなか注意できずにいるうち、彼らは帰って行った。

その直後、お店のスタッフ数人が、ホール中のテーブルをまわって謝り始めた。本人たちを叱ってくれればよかったのに、と、どうもモヤモヤが残った。

別のある日、アガワさんは、笑い声のとても大きな友人と食事をしていた。注意はしているものの、お酒が入るにつれて、いつのまにやらガッハガッハと笑い出してしまった友人。そこへ、ウエイターの若者がやってきて、腰をかがめてビシッと囁いた。「もう少し、静かにしてください! 他のお客様にご迷惑です!」きっぱりはっきりしっかり、叱られてしまった。

心で泣き、猛省するとともに、アガワさんは見事な叱り方に感動すら覚えたという。

「借りてきた猫」

友人の女性編集者が叱り方の極意を教えてくれたという。「借りてきた猫」というものだ。

「か……感情的にならない

り……理由を話す

て……手短に

き……キャラクター(人格や性格)に触れない

た……他人と比べない

ね……根に持たない

こ……個別に叱る」

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要約公開日 2014.07.11
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