身体はラクなはずなのに、オンライン会議はなぜ疲れるのか。アメリカでは2020年に入って「Zoom疲れ」(Zoom fatigue)という言葉が流行した。それはオンライン会議ならではの違和感が原因となる疲労のことだ。
著者はオンライン会議疲れのもととなる要素を次の5つに分類する。
まずは「リアルとの不調和」で生じる「映像疲れ」である。何人もの表情を同時に読みとる作業に疲れるのだ。ズームアップされた表情は、見ている人に無意識のうちに圧迫感や恐怖感を与えているともいわれる。こうしたオンライン画面からは、表情や声の調子など非言語的な情報が充分に伝わらない。また、画面の切り替え時に生じる微妙なズレがイライラのもとにもなる。
対処法としてはお互いに画面をオフにする時間を設けるのも有効だ。スクリーンを見続けると、まばたきは50%以下にまで低下する。ドライ・アイ、眼精疲労のリスクは避けられない。20分ごとに20秒間5メートル先のものを見るなど、アメリカ眼科学会が推奨している方法を習慣化してもよい。
2つ目は「音声疲れ」だ。画面と音声のタイムラグがストレスになるのだ。また、発言を譲り合ったり、音声が重なったりすることで、イライラが生まれる。沈黙が続くのも居心地が悪い。そこで役立つのが、発言しない間はミュートにするというルールだ。アメリカのオールド・ドミニオン大学の研究によると、ミュートのオン・オフを多用して発言するほうが、疲労度が低いという。
3つ目は「脳の疲れ」だ。オンライン会議は脳にもよくない影響を及ぼす。オンライン会議中にメールを書いたり、スマートフォンを見たりしている人も多いだろう。これは2つ以上のことを同時に行う「マルチタスク」の状態だ。
重度のマルチタスカーは、無関係な刺激からの干渉を受けやすいため、ミスが多く、作業の能率が悪いことが分かっている。イギリスのサセックス大学の研究によると、複数のデバイスを頻繁に操作していると、神経細胞が多く集まる脳の灰白質という部位の密度が低くなるという。そのため集中力が下がってしまうのだ。こうしたマルチタスクの弊害に気をつけるようにしたい。
4つ目は「身体の疲れ」だ。自宅でのリモートワークでは、姿勢やデスク、イスなどの作業環境に気をつけないと、腰痛などの問題が生じる。ノートパソコンを使うときには、前かがみになり、「ストレートネック」になりやすい。首の頸椎のカーブが失われると、首の痛みを引き起こすだけでなく、肩こりや頭痛にもつながる。座りっぱなしは万病のもとであるため、立ったり座ったりするという動作を増やすようにしたい。
最後は「ソーシャルな疲れ」だ。
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