TIME SMART

お金と時間の科学
未読
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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2021年07月22日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「いやー、もう何日も寝てなくて……」と自慢気に話す人は、誰の回りにも存在するのではないだろうか。自分の時間を削って仕事や勉強をすること、休みをとらずに働き続けることは、これまであまりにも長い間、美徳とされてきたし、それがある種のステータスにもなってきた。一方で、不安定な収入の状態から脱することができず、生活のために休まず働き続けなければならない、という事情を抱える場合も少なくない。

しかし近年では、「働き方改革」のように、休みをとらずに無理してでも働くことに対して疑問視する風潮も出てきている。コロナ禍によるリモートワークの推進は、勤務時間や職場にとらわれない働き方、生き方への変化を促進することにもなった。

本書でも指摘されているように、お金をたくさん稼いだからといって、稼いだ分だけ幸せになれるとは限らない。仕事や通勤による拘束で失う時間の価値を考えると、高給なだけの職よりも、それなりの給料に加えて様々な休暇制度による時間的手当が得られる職のほうが、トータルで見れば高い幸福感を得られるかもしれない。

とはいえ、これまでの働き方、生き方を急に変えるのも難しい。本書は、具体的にどのように実践すれば「タイム・リッチ」な生き方ができるようになるか、多様な考え方や方法を提示してくれる。個人の生き方や社会の在り方に対して大きな変化を迫られている現代において、有益なヒントを多く得られるだろう。企業の人事、労務担当者にもぜひご一読いただきたい一冊である。

ライター画像
大賀祐樹

著者

アシュリー・ウィランズ(Ashley Whillans)
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で社会心理学の博士号を取得し、現在はハーバード・ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー。
人々が時間とお金のトレードオフをどのようにこなすかや、それにかかわる決定が仕事の満足度や幸福感や心身の全般的な充足度にどのような影響を与えるかを、同大学院で研究している。これまで「行動科学の新星(Rising Star of Behavioral Science)」に2度選ばれ、数多くの学術誌に論文が掲載されてきた。科学コミュニケーションと、科学研究にかかわるよう一般人を促すことにも情熱を注いでいる。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、『ワシントン・ポスト』紙で取り上げられたのに加えて、『アトランティック』誌、『エコノミスト』誌、CNN、BBCでも研究が特集されている。ハーバード・ビジネススクールで教職に就く前には、ブリティッシュ・コロンビア州政府の政策イノベーション関与局に行動科学部門を共同設立した。研究者に転じる前にはヒット映画『ジュノ』をはじめとして、映画に出演した経験もある。

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちは、時間とお金を天秤にかけるといつも、お金のほうを大切にする習慣があるが、自分に残された時間は自分で思うより少ないもので、お金を追求するあまり、時間というかけがえのない資産を失いがちになる。
  • 要点
    2
    ほとんどの人は、いつも時間が足りないと感じる「タイム・プア」な状態にある。それは、時間とお金に関する決定を下すとき、いつも時間よりお金を優先させる「タイム・トラップ」に陥っているからだ。
  • 要点
    3
    「タイム・リッチ」になるためには、つねに時間に対してお金を投資するように心がける必要がある。

要約

マネー・イズ・タイム

時間とお金、どちらに価値がある?
Bet_Noire/gettyimages

時間とお金は、誰もが欲しがり、貴重に感じられるものだ。しかし、お金があれば時間がない、時間があればお金がないと言われるように、時間とお金は二者択一であり、両方を望むだけ手に入れるのは難しい。私たちはいつも、自分で料理するかそれとも外食するかといったように、時間とお金のどちらかを選んでいる。この時間とお金のトレードオフはきわめて重要であるにもかかわらず、私たちはそれをしていることにほとんど気づいていない。

私たちの誰もが、自分の人生にどれだけの時間が残されているかを知らない。ある日突然に時間はなくなってしまう。私たちは、より多くのお金を追い求める一方で、時間こそが自分にとって最も価値のある有限な資源であることを理解していない。

産業革命以来、人びとは「タイム・イズ・マネー」という言葉によって、時間を金銭的な価値に換算し、お金が最も価値のある資源であるという考えをすり込まれてきた。20代の人生で最高の年月を犠牲にする。70歳を過ぎてもなお働き続けて、人生の目標を先送りにして、やりたいことを毎年「来年」に回す。それでは、棺の内側を未使用の航空券で覆い尽くす羽目になってしまうかもしれない。

ほとんどの人は時間をお金ほど大切にしない。お金ばかりに目を向けて、ストレスと不幸と孤独感が蔓延し、結局、金銭的にもそれ以外のかたちでも高くつくことになる。この現象を「タイム・プア(時間的に貧乏)」と呼ぶ。

時間とお金に関する決定の多くが最適ではないことを知り、「タイム・イズ・マネー」ではなく「マネー・イズ・タイム」の考え方に従って生きられるようになることを目指すべきだ。お金よりも時間を大切にする「タイム・スマート」で「タイム・リッチ」な生き方ができるようになると、幸福感が増大し、社会的なつながりが強まり、人間関係と仕事の満足感が増すことになるだろう。

【必読ポイント!】 時間が後回しになる理由

タイム・プアになるのはなぜか

アメリカの勤労者の80%以上が、時間が足りないと感じている。研究データによると、タイム・プアな人は幸福感が弱く、生産性が低く、ストレスが多い。運動をせず脂肪の多い食品を摂って、健康を害することも多い。タイム・プアな人が多い社会は高い医療費が必要とされるし、従業員の生産性が落ちることで多額の損失を被っている。

1950年代に比べて、アメリカ人の労働時間は減少し、余暇の時間が増えているのにもかかわらず、かつてないほどタイム・プアに感じている。時間をどう評価するか次第でタイム・プアになりうるからだ。

私たちは絶えず誰かとつながり、もっとお金を稼ぐことを考える。自由時間がとれたとしても休むべきではないと自分に言い聞かせて、働き続けてしまう。オフィスを離れない人が英雄視され、寸暇を惜しんで働き続けなくてはならないと思わされる。このように、私たちは慢性的にタイム・プアに感じさせられる「タイム・トラップ(時間の罠)」にはまっているのだ。

お金の方が気になる

1時間の余暇があったとしても、その間にメールをチェックして返信したり、アプリの通知を確認したりする。1つひとつに大した時間はかからないが、「タイム・コンフェッティ(時間の紙吹雪)」が起きてしまう。認知機能に負荷がかかり、余暇が寸断され、幸福感を得る活動に没頭できないのだ。

莫大な資産を持っている最富裕層の人びとでさえ、幸せになるためにはもっと多くのお金が必要だと考えている。だが、165カ国170万人のデータを調べたところ、これ以上稼いでも幸福感が増さなくなる金額があることがわかった。

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要約公開日 2021.11.07
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