リスクというと、就職や転職、独立などといった「仕事」や、資産運用などといった「お金」について回るイメージが強いかもしれない。しかし実際は、何かを買うときにそのメーカーを信用する・しない、知り合った相手を信用する・しない、結婚する・離婚するなど、あらゆるシーンにおいてリスクを考慮する必要がある。
リスクの本質は「不確実な可能性への投資」だ。リスクが高いとは「変動幅が大きい」という意味であり、上方(最高の結果が出る可能性)と下方(最悪の結果が出る可能性)が含まれているということだ。上方にも目を向け、リスクを取って時間やお金や未来に投資していかなければ、時間リッチ&キャッシュリッチな生活は手に入らない。
もっともシンプルなリスクの取り方は、「そのリスクを取ったら最悪何が起きるか」を考え、それが自分の許容範囲であれば実行に移す、という方法だ。リスクテイク行動に対して自分のボーダーラインを設定し、失敗がそのラインを割らなければOKと考える、という流れである。
こうしてリスクテイクを重ねていくと、初めて遭遇することに対しても動揺しにくくなる。たとえ大きな金融危機や政治混乱があっても、現在の状況や今後の方向性、それに合わせて自分はどうすべきかを、想定の範囲内のこととして考えられるようになるだろう。
リスクリテラシーが身につけば、人生はもっと楽しくなる。人生の充実度はリスク管理によって決まるといっても過言ではない。
著者は、時間割引率の考え方をマスターすれば幸せな人生が送れると考えている。時間割引率とは経済学や行動経済学で用いられる概念で、「将来のよりよいことのために今の欲望をいかに我慢するか」という指標だ。
たとえば、今10万円もらうのと、1年後に10万1000円もらうのはどちらがいいか。1年後に1%上乗せされているのに、多くの人は「今の10万円」を選ぶ。この選択を「時間割引率が高い」という。お金は時間割引率が低いほど貯まる。
健康面では、時間割引率の低い選択をすることで、健康寿命の延長につながる。時間割引率の低い選択とは、「喫煙や飲酒はしない」や「足腰や心肺機能を鍛えるためによく歩く」といったものだ。時間割引率が高くなると、長い目で見た健康よりも目先の快楽を優先して喫煙や飲酒をしたり、車やエスカレーターを使ったりする。目の前の選択を将来への投資と考え、その投資が将来大きなリターンになることを期待して行動しよう。
時間割引率を下げるためには目の前の誘惑から逃れる必要があるが、意志の力に頼るのではなく、環境を整えることがポイントである。特に効果的なのは、やめたいものは身近に置かないようにすることだ。著者はスマホを家でも外でも手の届きにくい場所において、隙間時間を読書や考え事にあてるようにしている。意志の力を使わずに時間割引率を下げられるよう、うまく設計してみよう。
問題解決をめざすときは、(1)こうすると解決できるだろうという「定義」をし、(2)それに必要な情報を収集して、もっとも確からしい仮の解決法=「仮説」を手に入れ、(3)ひとつずつ実践して「検証」していくという、定義→仮説→検証の3つを繰り返せばよい。この繰り返しによって問題解決に必要不可欠な思考力を養える。この3ステップはビジネスだけでなく、ダイエットや資格試験、転職、離婚や子どもの問題など、あらゆる問題の解決に有効だ。
問題解決に何よりも必要なのは、定義に対する仮説をたくさん立てることである。
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