諦めの価値

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諦めの価値
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出版社
朝日新聞出版

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出版日
2021年08月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「諦めなければ夢は叶う」。よく聞く言葉であるし、著者もこれには同意だという。しかし、本書はそのうえで、夢の実現のためには「諦めが必要だ」ともいう。「諦める」という言葉にはネガティブなイメージがつきまとうが、本書の「諦める」は、夢の実現や目的達成のための現実的な戦略だ。

著者の主張はシンプルだ。夢をかなえるためには、考え、行動しなければならない。「考える」とは、現状を分析し、目的を吟味し、目的達成のための手段や方法を選ぶことである。その過程で、今までやってきた方法をやめたり、考えていた選択肢のいくつかを捨てたりすることになる。これが「諦める」ということだ。

労力を注ぎ込んだものを諦めざるを得ないとき、しかも、それで目標達成ができないとなると、そこで夢は終わってしまうような気分になる。しかし、考えたことは無駄にはならない。その諦めが未来の成功につながることをもまた、著者は教えてくれる。

要約者も、こうしたい、ああなればいい、という夢はあるが、実現できていないものも多々ある。本書を読み、自分を振り返ってみると、夢に対して強い思い入れがなく、「実現できたらいいな」程度の憧れにとどまっていて行動していないことに改めて気づかされた。

自分の人生はこのままでよいのか。そんなふうに漠然ともやもやしているときには、自分の本当の目的はなんなのか、その目的を本気で達成したいのかと、自分に問い直す時間が必要だ。一歩前に進みたいとき、ちょっと背中を押してもらいたいとき、おすすめの一冊だ。

ライター画像
中崎倫子

著者

森博嗣(もり ひろし)
1957年愛知県生まれ。作家。工学博士。某国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、96年に『すべてがFになる』(講談社ノベルス)で第1回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビュー。以後、スカイ・クロラシリーズ(中央公論新社)、S&Mシリーズ、『馬鹿と嘘の弓』(いずれも講談社)などの小説から、『「やりがいのある仕事」という幻想』(朝日新書)、クリームシリーズ (講談社)などのエッセィまで、300冊以上の著書が出版されているが、仕事量は1日1時間以内と決めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    諦めることは目的達成や夢の実現のための手段や方法を取捨選択することだ。
  • 要点
    2
    夢を実現する努力ができる人とただ憧れるだけの人の差は、夢の実現に対する思いの強さだ。思いが強い人は自ら具体的な行動を起こすからだ。
  • 要点
    3
    諦めが価値を持つのは、簡単には諦められないほどの取り組みをしているときだ。犠牲が伴うことがわかっていても、時間や労力を注ぎ込んだものを諦めなければならないときがある。そうした諦めは、未来で成功する確率を高める土壌となり、けっして無駄にはならない。

要約

【必読ポイント!】 諦めなければ夢は叶う 諦めるから夢が叶う

本当に望んでいれば、夢は必ず叶う

「夢」という言葉は「人生の目的」に近い意味で使われ、生きる目的は自分の夢を叶えるためだといえる。著者にとっての「自由」の定義は、「自分が思い描く夢に向かって、少しずつ近づいていく行為、自分がやりたいことを実現する過程や状況」だ。「夢」があり、そこに向かってアプローチする行為、「自由」があれば、それは同時に「幸せ」でもあるだろう。

これまでの著作のなかで、著者は「本当に望んでいれば夢は必ず叶う」と繰り返してきた。「諦める」とは真逆の行為ではないかと思われるかもしれないが、そうではない。ただぼんやりと「あんな生活したいな」と呟くだけでは、「望んでいる」ことにならない。本当に「望む」なら、なんらかの行動が伴うはずだ。

自分の時間と労力を使ってなにがしかの行動を起こし、継続すれば、夢は必ず叶う。少なくとも、目的に近づくことはできる。「諦める」とは、その夢に向かう行動を断念することだ。ここから「諦めなければ、夢は叶う」という法則が生まれる。夢が叶う前に死が訪れるかもしれない。その場合でも、一生夢を追いかけ続けたことになり、夢を叶えるのと同じくらい自由で幸せな人生となるだろう。しかし、多くの人は「行動」していない。その程度の「望み」では、夢はちっとも叶わない。

適切な判断とは、適切な諦めである
Nuthawut Somsuk/gettyimages

「諦める」とは、目的へ向かう行為をやめることだ。諦める対象は「目的」自体と「目的に向かう方法」の2つに大別される。夢そのものを諦めるのは、自分には実現不可能だと判断する場合がほとんどだ。このような事態に陥ってしまうのは、最初の評価が甘かったということになり、精神的痛手となる。できればこのような「諦め」はしたくないものだ。

目的に向かう方法を諦めることは、夢を断念することではない。方法を変えない限り目的達成が困難であると予測し、新たな方法を模索することである。途中でその方法を諦めることもあるし、無駄になるものもある。やりかけのものを無駄にしたくないという気持ちが膨らむほど、諦めるのは難しくなる。

人生では何度も「何を諦めるのか?」という選択をしなければならないときがある。

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要約公開日 2021.11.23
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