考えて、考えて、考える

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出版社
出版日
2021年08月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、丹羽宇一郎氏と藤井聡太氏の対談をまとめた一冊である。丹羽氏が藤井氏の言葉を引き出す形で、棋士・藤井聡太が歩んできた19年間が明らかにされていく。

丹羽氏は伊藤忠商事の名誉理事を務め、内閣府経済財政諮問会議議員などを歴任してきた経済界の重鎮だ。一方の藤井氏は、2016年10月に史上最年少の14歳2カ月でプロデビューを果たした棋士である。ふたりの年齢差は63歳。2018年に初めて会ってから、友人関係を続けているという。

藤井氏は、いまや日本で最も注目されている棋士といっても過言ではないだろう。プロデビュー直後から29連勝して歴代最多連勝記録を更新、最年少でタイトルを獲得するなど、メディアを連日にぎわせている。

昇段のスピードも凄まじく、将棋雑誌が「藤井聡太4段」と紹介する頃には5段どころかすでに6段に昇段していた、という話に衝撃を受けた人も多いのではないだろうか。本書にも「『藤井聡太二冠』と呼ばれるようになり、日本中から注目されるようになっ」たという記述があるが、本要約の執筆時点では「藤井三冠」となっている。

数々の新記録樹立やそれに対する周りの盛り上がりに反して、藤井氏本人はメディアを通してみるかぎり、何も変わらず、落ち着いた態度でいるように見える。丹羽氏も本書の中で、そんな藤井氏の態度に衝撃を受けたと語っている。藤井氏はいま、何を考え、何を思っているのか。なぜ常に自然体なのか。棋士・藤井聡太にとどまらず、人間・藤井聡太の一端を知ることができるのが本書の最大の魅力だろう。

ライター画像
藤平泰徳

著者

丹羽宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社名誉理事、公益社団法人日本中国友好協会会長、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、元中華人民共和国駐箚特命全権大使。1939年、愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。1998年、社長に就任。翌年、約4000億円の不良資産を一括処理し、翌年度の決算で同社史上最高益(当時)を記録。2004年、会長に就任。内閣府経済財政諮問会議議員、内閣府地方分権改革推進委員会委員長、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任し、2010年、民間出身では初の駐中国大使に就任。著書に、『人は仕事で磨かれる』(文春文庫)、『仕事と心の流儀』『社長って何だ!』『部長って何だ!』『会社がなくなる!』(以上、講談社現代新書)、『死ぬほど読書』『人間の器』(以上、幻冬舎新書)など多数。

藤井聡太(ふじい そうた)
将棋棋士。杉本昌隆八段門下。2002年、愛知県瀬戸市生まれ。小学4年生で奨励会に入会。2016年10月、史上最年少の14歳2ヵ月で4段昇段・プロ入り。以降、プロデビューから無敗のまま29連勝で歴代最多連勝記録を更新。2020年7月16日、棋聖を獲得し史上最年少タイトル、8月20日には王位を獲得し史上最年少二冠、2021年9月13日、叡王を獲得し史上最年少三冠を達成するなど数々の最年少記録を更新中。公式戦勝率もデビュー以来、4年連続で8割を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    丹羽氏によれば、トップの3条件は「負けず嫌い、反骨心」「忘れる力」「孤独の力」だ。藤井氏にも、それに当てはまる経験があった。
  • 要点
    2
    藤井氏は、納得したうえで取り組むことを大切にしており、学校の先生に「宿題なんてやる必要があるのか」と質問したこともある。こうした姿勢が心の強さの源になっているのではないかと丹羽氏は推測する。
  • 要点
    3
    将棋界ではいま、AIによってこれまでの価値観が塗り替えられようとしている。藤井氏は、AIは絶対的なものではなく、最終的には個人の工夫や考えが問われるだろうという見通しを持っている。

要約

【必読ポイント!】 トップの3条件

負けず嫌い、反骨心
RomoloTavani/gettyimages

2018年、丹羽宇一郎氏は、史上最年少棋士となった藤井聡太氏と初めて会った。当時の藤井氏は、高校に入学したばかり。63歳離れたふたりは、ときどき会うようになった。本書はそんなふたりの対談をまとめた一冊である。

丹羽氏が思う「トップの条件」は3つある。「負けず嫌い、反骨心」「忘れる力」「孤独の力」だ。

負けず嫌いといえば、藤井氏が子どもの頃、負けて激しく泣いていたことは広く知られている。負けず嫌いのエピソードとして藤井氏自身の記憶に残っているのは、小学2年生の頃、谷川浩司(たにがわこうじ)氏から指導対局を受けたとき、負けそうになって泣いてしまったこと。谷川氏が引き分けを提案するも、将棋盤の上に覆いかぶさって悔し泣きをした。

負けず嫌いで泣いてばかりいた藤井氏を、両親は温かく見守ってくれた。「そんなに泣くんだったら、もう将棋なんてやめなさい」と言われたのはたった1回だけで、「メソメソするな」などと叱られた記憶もない。

幼稚園の頃はピアノも習っていたが、あまり夢中になれなかった。欲しがるものはおもちゃやテレビゲームではなく将棋の本で、いつでもどこでも将棋をやりたがる子どもだったという。そんな藤井氏を見て、母はピアノをやめさせ、将棋に専念させることを決めた。

その後も小学4年生、6級で奨励会に入るまでは、負けて悔し泣きをすることがしばしばあった。しかし奨励会で棋士を目指している人たちと切磋琢磨する中で、「棋士になるためには、悔しさを態度に出すよりも、しっかり対局を振り返って次につなげることのほうが大事だ」と気付いた。

振り返りで大切にするのは、最初に形勢が傾いたのはいつかということだ。均衡が崩れた要因を言語化すれば、次回以降に応用できるようになると考えているからだ。

忘れる力

「この負けだけは生涯忘れないぞ」という対局があるか、という丹羽氏の質問に対して、藤井氏は「ない」と答える。激しく泣くことになった谷川氏との対局では、悔しい気持ちもあったが、それ以上に「トップ棋士の谷川氏と盤を挟むことができてとても良い経験になった」という思いのほうが強かった。悔しい気持ちだけでは次につながりにくい。悔しさがあっても、それを乗り越え、次に活かしていくことが大切なのだ。

藤井氏が忘れることの大事さに気付いたのは、プロになってからのことだ。負けた将棋の内容をしっかりと反省した後は、負けたこと自体はなるべく忘れて、切り替えるようにしている。勝った将棋は、そもそもあまり振り返らない。

将棋は必ず最後に勝ち負けがつくゲームだが、勝ち負けだけにこだわってしまうと、その内容について正しく振り返って評価することが難しくなるものだ。勝敗はいったん忘れ、その局面について振り返って学ぶ必要があると考えている。

孤独の力

「孤独の力」についても、丹羽氏は「あらゆる分野のトップにあてはまる」という。丹羽氏は伊藤忠商事の社長時代、株主への配当金を無配にして、バブル期の負債4000億円を一括計上するという荒療治をしたが、その最中は常に孤独だった。歴史ある会社を潰してしまうリスクがあったからだ。

責任者は、ただ一人自分だけ。そういうときは誰にも相談できないものだが、次の強さの糧にするためには、そういう孤独感がトップ自身になければならないと丹羽氏は考える。

藤井氏が「孤独の力」を感じる人物は、

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要約公開日 2021.11.28
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