アドラー心理学×幸福学でつかむ!

幸せに生きる方法

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出版社
ワニブックス

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出版日
2021年08月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

私たちは子どもの頃から、多くのダメ出しをされて育ってきている。「気が利かないなあ」「もう少し優しくできないの?」「だからダメなんだよ」……。相手は善意から言っているのかもしれない。しかし、これで「直った」人はどのくらいいるだろうか?

心理学で言うと、ダメ出しは、問題の原因を追求して直そうとする「原因論」のアプローチに当たる。一方、本書が推奨し、アドラー心理学で用いられるのは「目的論」だ。目的論は「悪いところの反対」に意識を向けて、それを強化するという方法である。「気が利かない」を「おおらか」に言い換えたり、「あの時、席を譲ってくれたね」と、「優しくしてくれた」場面を探して伝えたりする。アドラーによると「意識した部分は強化される」ため、良い部分にスポットを当てることによって、いち早く問題解決に近づくことができる。

上記はアドラー心理学のほんの一部であるが、これだけでも、なんとなく前向きな気持ちになれたのではないだろうか。アドラー心理学では、客観的事実よりも当事者の主観に重きを置く。本人が「どう感じたか」に寄り添い、共感し、幸せになる方向へ意識を向けていくのである。

本書ではアドラー心理学と幸福学の二側面より「どうしたら幸せに生きられるか」をわかりやすく説いている。自分自身の性格、人間関係、ビジネス、子育てなど、身近な悩みや問題にすぐ使える応用力抜群の一冊だ。ぜひページをめくって、幸せな生き方に役立てていただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

平本あきお(ひらもと あきお)
メンタルコーチ
1965年生まれ。米国アドラー大学院修士号取得、東京大学大学院教育学研究科修士号(臨床心理)取得。「人が幸せになる、科学的で体系的な方法」を39年間探し求め、世界中のカウンセリング、コーチング、瞑想を統合し、包括的で再現性のあるオリジナルメソッドを開発。大学卒業後、病院での心理カウンセラーや福祉系専門学校の心理学講師を歴任。1995年阪神・淡路大震災で両親を亡くしたことを機に、一念発起して渡米。アメリカでは小学校や州立刑務所、精神科デイケアなどに、コーチングを初めて導入。2001年ニューヨークテロ直後、日本に帰国し起業。北京オリンピック金メダリスト、メジャーリーガーなどのトップアスリートや有名俳優、上場企業経営者をコーチング。産業、医療福祉、教育、政治、スポーツ、芸能など各業界のリーダーや起業家もサポートし、約10万人の研修実績を誇る。著書に『引き出す力』[山﨑拓巳との共著](ビジネス社)、『フセンで考えるとうまくいく』(現代書林)などがある。

前野隆司(まえの たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、ウェルビーイングリサーチセンター長
1962年生まれ。東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了後、キヤノン株式会社でカメラやロボットの研究職に従事したのち、慶應義塾大学教授に転ずる。ロボット工学に関連した人工知能の研究途上で、人間の意識に関する仮説「受動意識仮説」を見いだす。現在はヒューマンインターフェイス、ロボット、教育、地域社会、ビジネス、幸福な人生、平和な世界のデザインまで、さまざまなシステムデザイン・マネジメント研究をおこなっている。著書に『無意識の整え方―身体も心も運命もなぜかうまく動きだす30の習慣』『無意識と対話する方法』[保井俊之との共著]『古の武術に学ぶ 無意識のちから』[甲野善紀との共著]『無意識がわかれば人生が変わる』[由佐美加子との共著](以上ワニ・プラス)、『脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代心理学が客観的事実を重視するのに対し、アドラー心理学は当事者の主観に寄り添い「どうしたら悩みが解決するのか」を主軸に置いている。
  • 要点
    2
    人が幸せを感じるためには「共同体感覚」が必要である。共同体感覚とは、「自己受容」「他者信頼」「貢献感」の3つから成り立つ。
  • 要点
    3
    アドラー心理学では、人の認識に関わる問題の解決に「目的論」を用いる。目的論は悪いところの反対に意識を向けて強化するアプローチである。

要約

「使える」アドラー心理学

人はどうしたら幸せになれるのか

アドラー心理学とは、オーストリア出身の心理学者アルフレッド・アドラー(1870〜1937年)が提唱した理論に基づき、発展してきた心理学体系の1つである。

現代心理学との大きな違いの1つは「アドラー心理学は理学ではなく工学である」という点とされる。例えば、あるトップモデルが「私はブスだ」と悩んでいるとする。どうアドバイスしたら、悩みが解決するだろうか?

一般的には、客観的事実(エビデンス)を彼女に示して「あなたは十分キレイです。悩む必要はありません」と説得しようとするだろう。このように客観性を重視するのが、現代心理学のアプローチである。

一方アドラー心理学では、問題解決に客観的視点を持ち込まない。当事者の主観に寄り添い、「あなたはそう思うんですね」「苦しいんですね」と深く共感しながら、さまざまな理論や技法を用いて解決していく。

実証主義的な現代心理学の多くは「どうして人は悩むのか」という視点をベースにしているのに対し、アドラーは「どうしたら悩みが解決するのか」を基本にしている。アドラーにとって最も重要なことは、客観的な正しさやエビデンスではなく、相手が元気になることだったのだろう。

アドラー心理学とは工学、つまり、幸せになるための「使える」心理学なのである。

幸せに欠かせない「共同体感覚」
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アドラーの研究テーマは時代によって異なっていた。前期は「劣等感の補償」、中期は「権力への意志」、後期は「共同体感覚」とに分けられる。

アドラー心理学の中核であり、現代のアドラー心理学の土台となっているのは「共同体感覚」である。この概念を日本に紹介した精神科医・野田俊作先生はこの共同体感覚を「自己受容」、「他者信頼」、「貢献感」の3つの要素で定義した。

自己受容とは、自分を受け入れることである。自分の良い面も欠点も含めてOKを出せることであり、良いところだけを見つける自己承認とは、似て非なるものだ。先述のトップモデルは、自己受容ができていない状態の一例である。客観的な評価にかかわらず「自分の容姿が気に入っている」ことが、自己受容をできている状態だ。

他者信頼とは、まわりの人を信頼できること。他人に任せられず、自分の負担感が増すばかりの経営者などは、他者信頼に欠ける。

そして、貢献感はまわりの人の役に立てているという感覚である。

この3つが高いほど共同体感覚が満たされ、人は幸せを感じる。逆に言えば、心の病やさまざまなトラブルは、この3つが低いことによって生じている。この3要素を高めることにより、多くの問題が解決できるだろう。

幸福学の4つの因子

著者の前野氏が研究する「幸福学」は、「アドラー心理学」とよく似ているとされる。アドラー心理学の中で、幸福学と最も相関が強いのは自己受容である。幸せな人は自己受容ができている一方、自己受容のできていない人は、不幸せを感じる傾向が強い。

幸福学では、「幸せの4因子」という、人間の幸福を高める4つのポイントがある。以下の4つの因子が偏りなく、すべて高い人が幸せな人と言える。

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要約公開日 2021.11.29
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