人生をよくしようと日々頑張っているのに、ふと気がつくとたいして好きでもない仕事に追われている――そんな感覚に陥ったことはないだろうか。頑張っているのになぜかうまくいかない原因は、人生の「埋没コスト(サンクコスト)」にある。
経済学で「埋没コスト」といえば、「ある経済行為に対して、どんな意思決定をしても回収できない費用」のことだ。ここから援用して本書では、「過去にうまくいった考え方や方法を続けているうちに、思考パターンがその過去に固定化され、過去の延長線上でしかものごとが考えられなくなる状態」をさす。要するに、「せっかく○○したのだから」という言葉で表せる思考や行動パターンだ。過去の思考にとらわれて、人生が停滞している状態である。
埋没コストを取り戻せない以上、これまで通り同じことを続けていれば、損失ばかりが膨らんでいく。本書では、こうした行動を「やめる」ことで、本当に好きなことをしながら豊かな人生を生きる方法を提示する。
人生の「埋没コスト」は、仕事だけでなく日常のあらゆるところに潜んでいる。何年も着ていないコートやほとんど使っていない電化製品、本棚に並べただけで読んでいない本など、「使っていないのに捨てられないモノ」はないだろうか。人は「うまくいかなかった」というネガティブな記憶があるモノに限って捨てられない傾向がある。手元に置いておくことで幸せな気持ちになれるならいいが、「せっかく買ったから」という理由だけで持っているなら、手放したほうがいいだろう。
「人間関係」にも埋没コストは生じる。異動や退職の後、年賀状が来なくなることがある。相手はあなた自身ではなく、あなたの会社名や役職という「記号」と付き合っていたのだろう。そうした出来事を嘆くのは、属性を重視するような人間関係に人生の貴重な時間を割いているのと同じことだ。
大切なのは「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)」の視点である。判断基準は「人生が豊かになるかどうか」「好きかどうか」でいい。そうすれば、幸せな人生につながるし、周囲とも良好な人間関係を築いていける。
QOLを高めていくには、過去の自分の考え方やあり方をリセットして、マインドセットをアップグレードする必要がある。過去の延長線上で改善していくのではなく、自分というOSをアップグレードする、つまり根こそぎ入れ替えるのだ。
ここで注目するのは、自分自身のなかにある「マインド面の埋没コスト」だ。具体的には、経験、固執、古いやり方、過去の成功体験、先入観、偏見、常識、思い出などがこれに該当する。
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