世の中にあるリーダーシップに関するテキストは膨大だ。一説によると、リーダーシップに関する書籍は1万5000冊もあり、記事ともなれば年間数千もの単位で発表されている。
私たちはリーダーシップが重要と理解している。しかし、リーダーシップの本質を掴むのは難しい。リーダーシップをめぐる成功や失敗が、どのようなインパクトを持っているか、体験を通じて理解している。
リーダーシップは、組織の在り方と密接に関係する。むしろ組織の存在がリーダーを生み出している。一方、何も変化させる必要がないほどにパフォーマンスが高いチームでは、リーダーは必要ない。裏返せば、すでに失敗や敗北が確定している状況下では、リーダーが出現しても意味がない。チームの生産性が中程度、すなわちチームの何らかの行動変化によって勝負の行方も変化する環境だけが、リーダーを求める。つまり、リーダーシップ論とは組織論である。
原子は、ランダムな存在ではなく、規則的に振る舞う。それが集まると分子になったり結晶化したりする。このように、個々の要素に与えられている単純な規則が複雑なパターンを作り出すプロセスのことを、「自己組織化」と呼ぶ。
組織がリーダーを求めれば、リーダーは自然に生まれる。その組織に問題がなければ、リーダーに関する研究の意味はない。
チンパンジーの群れは、協力し合うという本能によって、むしろ組織だった争い、戦争を行う。人間の社会における自己組織化もまた、究極的には戦争につながっている。「自然に生まれるリーダーが、よいリーダー」とは限らない。
現代のリーダーシップ研究もまた、争いに勝てるリーダーの観察になってはいないか。競争が進化を生むという性質上、仕方のないことかもしれない。しかし、地球規模の大量絶滅が進行しつつある今、手をこまぬいていられない。自己組織化の問題点を超越し、真の平和を目指すためのリーダーシップが求められている。
リーダーシップは、2人以上の人間がいる組織においてのみ生じる概念だ。もし世界で唯一残された最後の人間だとしたら、リーダーシップに悩むことはないだろう。
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