「戦略PRとは宣伝力や商品力ではない。戦略PRとは、商品が売れるためにつくり出したい空気、カジュアル世論をつくることだ」
これは著者が既刊書『戦略PR』で提唱した内容である。この主張は企業や広告業界に支持された新しい発想だった。
空気をつくる事例として「おむつ」が分かりやすい。おむつのブランド認知度は100%に近く、価格競争が激しい。そこでメーカーが取った戦略PRは「赤ちゃんの睡眠」だ。まず小児睡眠の専門家と国際調査を実施、多くが夜10時以降まで起きているといった日本の赤ちゃんの睡眠環境の課題を発表した。
これがマスコミやSNSで話題となり、わずか2か月で、赤ちゃんの睡眠に関する世間の課題認識が醸成された。そのタイミングに合わせ「赤ちゃんの睡眠を考えたブランド」という広告と店頭施策を展開した。空気づくりと解決策の商品訴求により売上が向上した。
ポイントは、自己主張の強い企業発の情報ではなく、ネットの影響により報道情報や口コミが増した、「第三者話法」を取り入れた点である。
ステルスマーケティング、略称「ステマ」は口コミの効果やPRの手法の成果に釣られ、安易に利用しようとする思惑から生まれたダークサイドの発想だ。
日本独特のノンクレジット広告も同じで、撲滅されるべきものだ。ただ、PR=パブリックリレーションズという理解が乏しい日本ではPR=ステマと見られがちである。そのため、PRを実行する企業は明確な指針を持たなければならない。
ステマとPRの違いは2つの視点で整理できる。
1つ目は関係性を明示すること。金銭の授受が発生した場合、何の対価だったのかを明確にする。例えばインフルエンサーに物品を提供する場合に、商品紹介を“期待して”の供与はセーフだが、紹介を前提とした対価の供与はグレーだ。
2つ目は、編集権の所在だ。いつ、どこで、どんな内容を表に出すか。PR活動であれば、その編集権を買ってはいけない。編集権ごと買う=広告になる。
なぜ戦略PRをすべきか。この10年で起こった環境変化をもとに、著者は3つの理由を挙げている。
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