外国人が日本に来て一番感動するのは、「日本のおもてなしの心」だそうだ。期待を上回る心遣いに驚かされるのだ。究極のおもてなしは「茶道」にあるともいわれる。茶道では、お客様をおもてなしする際、何日も前からお茶室の内外や道具、菓子、花などを丹念に準備する。お客様との一期一会を大事にする心を表現するのが、茶道のおもてなしだ。お客様を思い、入念な準備をする茶道の心は、仕事や生活で活かしてこそのものだ。
外国のVIPでも茶道に興味を持つ方は多い。著者は、ブルネイ国の国王の「即位50周年を祝う会」で、茶道を披露する機会があった。渡航前に、どのような抹茶を持っていったら喜んでもらえるかを徹底的にリサーチした。ブルネイには緑茶を飲む習慣がなかったので、苦味が少なくて甘みのあるブルネイブレンド茶を用意した。抹茶を一口飲んだ王女は「このお抹茶は今まで飲んだどのお茶より美味しいですね」とお気に召したご様子だった。お茶の葉だけでできているのでハラルフードであるとお伝えすると、最後の一滴まで召し上がった。相手を想い、事前の準備をすることの大切さを再認識した出来事だった。
初来日したエストニア首相がお茶室にいらした際には、多忙な首相に少しでもリラックスしていただくために、お茶会の設えやコンセプトを考えた。大所帯でいらした首相に、お手前をご覧いただいた後、首相ご自身にもお茶を点てていただいた。「お茶を点てている間は、目の前のお抹茶だけに集中して、心が静かになった」と、リラックスして喜んでいただくことができた。
外国人のお客様からの質問で一番多いのが「お抹茶はどのように作られるのですか」というものだ。煎茶と抹茶を混同している方も多いが、日本人でもこの違いを説明できる人は少ない。
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