ゆるめる準備

場にいい流れをつくる45のヒント
未読
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出版社
朝日新聞出版

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出版日
2021年11月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

アシスタントアナウンサー。中央で番組を取り仕切るメインMCの隣で、さりげなくサポートしたり場をまとめたりするその人たちは、テレビ番組になくてはならない存在だ。本書の著者である川田裕美アナウンサーは、『情報ライブ ミヤネ屋』など、数々の人気情報番組でアシスタントアナウンサーを務めてきた。しっかりと脇を固める川田アナがいたからこそ、さらに番組が好きになったという視聴者も多いはずだ。

本書は川田アナ初のビジネス書であり、15年間のアナウンサー生活を通して経験した多彩な知見やエピソードが詰まった一冊だ。「場にいい流れをつくる45のヒント」が掲載されており、「きりっと!」と「ゆるっと。」の2部構成となっている。マスコミ業界というと、一見、一般社会とはまったく異なる華やかな世界に見えるかもしれない。しかし本書を読むと、番組制作は、出演者と裏方スタッフがワンチームとなって取り組む「ビジネスプロジェクト」のようなものであることがわかる。だからこそ業界外のビジネスパーソンにとっても、あらゆる組織や場面で応用できるヒントが見つかるだろう。

今やフリーアナウンサーとして、多方面で活躍する川田アナ。本書では、人知れず努力を重ねた新人時代やアナウンサーを目指して奮闘した学生時代など、知られざるエピソードも満載だ。仕事や人生に悩むビジネスパーソンは、きっと勇気をもらえるだろう。チームによりよい場を提供したいと願う組織人必読の一冊である。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

川田裕美(かわた ひろみ)
1983年、大阪府出身。フリーアナウンサー。和歌山大学経済学部卒。2006年、読売テレビに入社。『情報ライブ ミヤネ屋』『マヨブラジオ』『大阪ほんわかテレビ』『ズームイン!! SUPER』『朝生ワイド す・またん! 』など幅広いジャンルの番組に出演する。
新人時代から、多くの芸能界の“大御所”らとの共演で鍛えられたコミュニケーションの反射神経で、生の報道番組からバラエティまで幅広く活躍している。その、てきぱきとした仕事ぶりの一方で、やわらかく周りを和ませる雰囲気や、スキップが苦手といったギャップも魅力。
15年3月に読売テレビを退社し、フリーに転身、東京を拠点に活動をスタートする。『すもももももも!ピーチCAFE』(読売テレビ)、『大阪人の新常識 OSAKA LOVER』(テレビ大阪)などの番組でレギュラーとして活躍するほか、ラジオパーソナリティなど活動の幅は広がりつづけている。著書に『あんことわたし―日日大あん吉日』(ぴあ)、『東京あんこ巡り』(KADOKAWA)がある。本書は初のビジネス書。
川田裕美オフィシャルブログ「Sweet Room」
https://ameblo.jp/kawata--hiromi/

本書の要点

  • 要点
    1
    自分の役割がわからないときは、周りの人や現場を観察してみよう。
  • 要点
    2
    仕事の引き継ぎの際は、前任者の話を徹底的に聞いて、コピーするくらいの気持ちで取り組むとよい。聞かれる立場からすると、根掘り葉掘り質問してくれた方が安心できるものだ。
  • 要点
    3
    初対面の相手には、いきなり距離をつめようとしないこと。相手のペースに合わせて、ゆっくり関係を築いていく。
  • 要点
    4
    人生の大事な決断をするとき、まわりにゆだねてしまってはいけない。自分の心の声を聞いて、納得のいく決断をするべきだ。

要約

【必読ポイント!】きりっと!

相手をしっかり観察する

アナウンサーである著者は、番組進行のアシスタントの仕事を任される機会が多い。この仕事のおもしろさは、番組の目指す雰囲気やメインMCによって、求められる対応が変わってくることだ。たとえば東野幸治さんは、知識豊富で、アシスタント不要といってもいいほどの方である。だから著者は「私が番組のためにできることってなんだろう」と常に考えている。

アシスタントとして大切にしていることは、MCの方をよく観察することだ。あるとき著者は、収録中、東野さんが身体を少しだけ著者の方に傾ける瞬間があることに気づいた。さらに観察を続けてわかったのは、東野さんが、ゲストにひととおり話を聞いたときにそのしぐさをしていることだった。そこで著者は“切り替えポイントになる時間”をつくるため、東野さんが身体を傾けたその瞬間、少し角度の違う質問をしたり、自分なりのコメントをしたりするようにした。

自分が何を求められているのか、どう対応するのがベストなのか。判断がつかないときは、人や現場をよく観察してみよう。きっと見えてくるものがあるはずだ。

前任者を徹底的にコピーする
FangXiaNuo/gettyimages

アナウンサーは、先輩アナウンサーの後任として番組を担当することもある。先輩の仕事を引き継ぐのは、少なくはないプレッシャーを感じるものだ。著者はそんなとき、最初から個性を出そうとしたり、自分のやり方で進めようとしたりするのではなく、前任者を完全にコピーすることを目指す。

完成されたチームに新しいメンバーが入るのだから、既存メンバーも大変だろう。自分がどれだけ努力しても、必ず違和感が生じるものだ。もし加入後すぐに「うまくいっているなあ」と感じられたら、それは自分がすごいのではなく、まわりが気を遣って合わせてくれているからだ。新しい環境で余裕がなくとも、そのことを決して忘れてはならない。

著者は『情報ライブ ミヤネ屋』でアシスタントMCを引き継ぐ際、前任の森若佐紀子アナウンサーに2週間べったり張りついた。スタジオを見学し、立ち位置からフリップを出すタイミングまで、森若アナウンサーの動きを事細かにメモする。打ち合わせや着替えのタイミングなど、本番までの時間の使い方も聞き取った。そして帰宅後は録画を見返して、どんな風に映っているかを確認した。

著者が読売テレビを退社するときは、後任に引き継ぐ立場になった。そこでわかったのは、聞かれる立場からすると、根掘り葉掘り質問してくれた方が安心できるということだ。誰かから仕事を引き継ぐときは、躊躇せず徹底的にヒアリングしよう。

先輩のアドバイスは一度試してみる

新人アナウンサー時代、初めて一人でロケに行くときのこと。著者は教育担当だった森たけしアナウンサーに「明日のロケの準備、できている?」と聞かれた。取材相手への想定質問として準備していたものを20個ほど見せると、森アナウンサーはあきれた顔で「これだけの質問でロケに行こうとしているの?」「思いつく限りの質問を書き出してみて。最低100個!」と言った。著者は「そんなに考えていっても、ほとんど使わないのに」と少しの反発心を抱きながら、必死で準備をした。

しかし実際にやってみると、森アナウンサーが100個と言った意味が理解できた。

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要約公開日 2021.12.28
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