1万人の脳を見た名医が教える  すごい左利き
1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法
1万人の脳を見た名医が教える  すごい左利き
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2021年09月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

左利きの人に対して、「ユニーク」「独創的」「芸術的才能がある」といったイメージを持っている人もいるだろう。要約者は右利きだが、これまで出会ってきた左利きの人たちは、独自の感性を持つタイプが多かったように感じている。

本書は左利きの脳内科医、『脳の強化書』などで知られる加藤俊徳氏による、左利きのための本である。本書によると、日本における左利きの割合はたった10%。著者は、幼い頃から常に「自分はまわりの人とは何か違うな」と感じ、コンプレックスを抱えていたという。その疑問を解消したいという思いから、医学の道へ進んだそうだ。

本書を読むと、タイトル通り、左利きの「すごさ」がわかるだろう。そしてそのすごさは脳のメカニズムの違いによるものだということが理解できるはずだ。手指と脳のつながりは非常に強く、大脳の3分の1が両手指をコントロールするために使われている。手の使い方によって脳の構造が変化し、それが感覚や思考に大きな影響をもたらしているというのだ。アインシュタイン、エジソン、ダーウィン、アリストテレス、モーツァルト、ピカソなど、古今東西の「天才」に左利きが多いのも納得である。

本書は左利きの人に向けて書かれているが、右利きの人でも興味深く読め、活用できる内容だ。特に「直感の磨き方」は要約でも詳しく紹介しているので、ぜひ多くの人に試してほしい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

加藤俊徳(かとう としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする! 片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com/
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com/

本書の要点

  • 要点
    1
    左利きの個性の一つとして、「直感」が挙げられる。直感の精度を高めるには、言語以外の情報を意識的に増やすことが効果的だ。
  • 要点
    2
    左利きは、目でとらえた情報をイメージで記憶する傾向が強い。そのため脳に保存される情報量が多く、既存の枠にとらわれない発想ができる。
  • 要点
    3
    右利きは右脳を眠らせていることが多い。一方、左利きは両方をまんべんなく使うため、直感や独創性が生み出されやすい。

要約

利き手と脳の関係

利き手がある理由
Khanchit Khirisutchalual/gettyimages

文字を書いたりハサミを使ったりするときに優先的に使う手を「利き手」という。手だけではなく、ボールが蹴りやすい「利き足」や、望遠鏡のような小さい穴を覗きやすい「利き目」、電話をあてる「利き耳」なども存在する。

こうした「利き○○」が生まれたのは、人間が二足歩行するようになってからのことだと考えられている。両手が自由に使えるようになり、細かい作業を左右の手で分担できるようになったのだ。

その結果人間は、脳の負担を減らせるようになった。襲われたときとっさに右手でかばうなど、使う手の優先順位が決まっていると、ムダな動きが減って危険を回避しやすくなるからだ。

動作の機能を分担しておけば、脳はいちいち指令を出さなくてすみ、処理が早くなる。体のさまざまな部位に「利き○○」が存在するのは、処理速度を速くするためなのだ。

脳には8つの基地がある

人間の脳には1000億個以上の神経細胞があり、同じような機能を持つ細胞同士が集まって「基地」を作っている。著者はこの基地を住所に見立てて、「脳番地」を割り振った。

脳番地は全部でおよそ120あり、大きく分けると「思考系」「感情系」「伝達系」「運動系」「聴覚系」「視覚系」「理解系」「記憶系」の8つになる。1つの動きに対して1つの脳番地だけが対応しているわけではなく、2つ以上の脳番地が連携して働くこともある。たとえば人と会話をする場面では、声を聞くための「聴覚系脳番地」や、言葉を理解するための「理解系脳番地」などが連携して働く。

8つの脳番地は左右の脳にほぼ均等にまたがっているが、同じ動作でも、右脳と左脳では担う役割が異なる。「感情系脳番地」では、左脳は自分の感情や意思を作り出し、右脳は自分以外の人の感情を読み取る働きをする。「視覚系脳番地」では、左脳が文字や文章などを読み取り、右脳が絵や写真、映像などを処理している。

一方、左右で同じ動きをするのが「運動系脳番地」だ。右利きの人は左脳の運動系脳番地が、左利きの人は右脳の運動系脳番地が発達している。つまり、左手を使うと右脳が、右手を使うと左脳が発達するのである。

手が脳を活性化させる

右利き優先社会において、右利きの人は「利き手」に気を配る習慣がない。一方で左利きは、字を書いたりハサミを使ったりするたびに「みんなは右手でああやってるけど、左手ではどうしたらいいか」を常に意識しながら育っている。

両手を意識することは、脳の活性化につながる。手を動かすときに「右手を使っている」「左手を使っている」と注意を向けると、運動系や感覚系などさまざまな脳番地が刺激されるのだ。

私たちの大脳の3分の1は、両手と指をコントロールするために使われている。使っている手に気を配りつつ手や指をよく使うことで、脳はどんどん活性化していく。両手を常に気にかけている左利きは、知らず知らずのうちに脳を活性化させているのである。

【必読ポイント!】左利きは「直感」がすごい

右脳は「巨大なデータベース」
gyro/gettyimages

左利きの脳の使い方は独特だ。それによって生まれる個性のひとつが「直感」である。

多くの人は「直感は単なる思いつきであり、当たり外れがあるもの」と考え、十分には活かしていない。しかし近年の研究では、直感に従って決断すると、論理的に考えるよりもよい結果が出ることがわかっている。「直感」とは、膨大な情報を蓄えた脳のデータベースから、精度が高く、より正確な情報を選択して導き出された結果だと言えるだろう。

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要約公開日 2022.01.23
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