修身教授録

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出版社
致知出版社

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出版日
1989年03月31日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、教育者の養成機関である師範学校において、昭和12年(1937年)4月から2年間にわたって行われた「修身」の授業の講義録である。森信三は、この講義録によって日本の教育界で一躍有名となり、後年は“国民教育の師父”と呼ばれた。1989年に再編集のうえ出版され、以来多くの人に読み継がれ、各界の多くの指導者によって支持されている。

戦前の修身の話というと、滅私奉公のような事柄が語られると思われがちだ。しかし、本講義の目指すところは個の確立であり、自立である。驚くほどリベラルな内容とも言える。国や社会への貢献も、優れた個が必然的に担うべき領域だと説く。また、この講義が異色だったのは、当時の文部省の方針に沿うことなく、著者自身の生の言葉が紡がれていたことである。退職をも覚悟して臨んだという。

要約者は、真っ直ぐな、濁りのない言葉に触れたという気持ちに満たされた。いま本書に出会えてよかったと思う。世代を超越し、読み継がれていることも大いに納得した。

特に心を打たれたのは、教えることで子弟と共に成長するという姿勢だ。1年目の講義に比べて2年目のほうが格段に闊達な講義となっていることからも、その様子が伝わってくる。もちろん主旨は一貫しているのだが、語り口がより平易になり、さらに深みが出ている。

本書は読むたびに新たな発見があり、味わいが増す。いつの間にか座右の一冊になっているという本の典型ではないだろうか。

ライター画像
しいたに

著者

森信三(もり のぶぞう)
明治29年愛知県生まれ。大正12年京都大学哲学科に入学し、主任教授・西田幾多郎の教えを受ける。卒業後、同大学大学院に籍を置きつつ、天王寺師範学校の専攻科講師となる。
昭和14年、旧満州の建国大学に赴任。敗戦により新京脱出。昭和21年6月無事生還。同28年、神戸大学教育学部教授に就任。同35年、神戸大学退官。同40年、神戸海星女子学院大学教授に就任。同50年、「実践人の家」建設。平成4年11月逝去。「国民教育の師父」と謳われ、現在も多くの人々に感化を与え続けている。
著書は、『真理は現実のただ中にあり』『人生二度なし』『修身教授録一日一言』『森信三 教師のための一日一言』『家庭教育の心得21』『女性のための「修身教授録」』『森信三一日一言』『人生論としての読書論』『10代のための人間学』『父親のための人間学』『森信三訓言集』『理想の小学教師像』『若き友への人生論』『森信三 運命を創る100の金言』(いずれも致知出版社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    二度とない自分の人生をいかに生きるのかという「志」が定まったときに、私たちの真の人生は始まる。
  • 要点
    2
    一人の人間の持つ世界の広さと深さは、その人の読書の広さと深さに比例する。真の読書とは、自己の内心から湧き起こる、やむにやまれぬ要求によるものだ。
  • 要点
    3
    「最善観(オプティミズム)」と「世の中は正直」が著者の根本信念である。最善観とは、わが身に降りかかってくる一切の出来事は、自分にとっては必然であるとともに、また最善であるという信念である。

要約

【必読ポイント!】 人生の礎

立志

人生の意義は、青少年時代の志の立て方に比例すると言っていいだろう。

無限にある人生の意味をどれだけ深く自覚し、またその意味にどれほど早くから気づくかによって、人間の価値は定まる。

日本の教育において、昔から「立志」の問題が最も重視されているのはこのためである。極論すれば、教育の究極の意義はこの立志にある。

逆に言うと、真に志が立ったならば、ある意味ではもはや教えられることはない。ひとたび志が立てば、本人に必要な一切の知識は、本人が自ら求めてやまないものだからだ。

志は、人はいかに生きるべきか、人はどのような人生を貫くべきかという普遍的な問いを、自分自身に問いかけるところから生まれる。二度とない自分の人生をいかに生きるのか――。その根本的な目標が定まったときに、私たちの真の人生は始まるのだ。

人生の路程
Pavel1964/gettyimages

40歳前後をもって、人生の折り返しと考えるとすれば、20歳までは志を立てる時期と言ってよいだろう。言い換えれば、将来どのようにして国や社会のために役立つ人間になるのかという志は、15歳頃から、遅くても20歳までには確立しなければならない。

そしてそれからの20年間は、準備期と言ってよいだろう。この20歳から40歳までの20年間の準備の首尾が、後半生の活動を左右する。

物事の対象はどうあれ、準備には長い時間を必要とする。しかし、実行の段階になるとその何分の一かの時間ですんでしまう。たとえば食事を用意するには1、2時間、あるいは数時間の手間がかかるが、食べる段になると10分、15分しかかからない。同様に人生においても、よほど早くからしっかりと考えて準備をしておかなければ、手遅れということになりかねない。

人間もほんとうに花が開きだすのは、40歳くらいからだ。そしてそれが実を結ぶのは、60歳辺りになるだろう。

人生は二度とない。人生は、ただ一回のマラソン競走のようなものだ。勝敗の決は一生にただ一回、人生の終わりにあるだけだ。しかしマラソン競走と考えている間は、まだ心にゆるみが出る。人生が、50メートルの短距離競走だと分かってくると、人間にも凄味が加わってくる。

読書

真の読書とはどのようなものだろうか。

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要約公開日 2022.02.12
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