自分や家族が着なくなった古着を、リサイクルやチャリティの名目で自治体や企業に提供したことのある人も少なくないだろう。先進国で集められた大量の古着が最終的に辿り着くのは途上国であり、その多くがアフリカである。
貧しい国に暮らす人たちは服に困っているのだから、中古の物品を送ってあげることはウィンウィンで、正しいことに思えるだろう。しかし、善意のつもりの寄付が途上国の人たちの自立する力を奪い、いつまでも貧困から脱却できない原因になっているという不都合な事実がある。
アフリカの多くの国々では、ミシンを使って服を生産したり繊維工場を経営したりすることで生計を立て、自立した生活をめざす人たちがいる。しかし、そうした人々がいくら努力しても、国外からタダ同然で入ってくる古着には太刀打ちできない。現に地元の衣類製造工場が閉鎖に追いやられ、繊維産業に携わっていた地元民の多くが失業していった。
もし現地の人たちが地元で生産された服を購入していれば、地域の経済が回り、雇用が増え、先進国からの「お下がり」に依存しない自立した経済体制を構築できていたはずだ。さらに、大量の古着は、アフリカの国々で廃棄や埋め立てという環境問題も引き起こしている。ゴミを処理するのは現地の人たちであるため、処理のコストや時間がかかってしまう。
本来あるべき寄付や援助とは、現地の人たちの環境を整え、彼らが持つ力が十分に発揮でき、未来をつくるための力を取り戻せるようにサポートすることだ。
恵方巻きが大量廃棄されているといったニュースをきっかけに、日本でも「食品ロス(フードロス)」の問題がクローズアップされるようになった。
その一方で、大量の衣服が廃棄されている「衣料ロス」の問題はあまり知られていない。そこで、アパレル業界を取り上げ、大量生産・大量廃棄の問題について考えていきたい。
日本では1年間で供給される新しい衣服の量が約38億点。それに対して、消費者が購入するのは約20億点と言われている。差し引きで18億点、少なくとも年間10億点以上という大量の衣料が、誰の手に渡ることもなく新品のままで廃棄されている。人口で割ると、一人当たり年間8着以上にのぼる。
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