「農業革命」「産業革命」に続く歴史上の大変革が、20世紀後半に起こった「情報革命」である。それに伴い、社会は工業社会から知識社会へとシフトした。
さらにインターネットの時代に入り、私たちは短期間で3つのパラダイムシフトを経験した。まずは1995年頃から始まった「デジタルシフト」だ。誰でもアイデア次第で起業ができる時代が到来し、アマゾンやグーグルといった企業が生まれた。そこでのキーワードは「技術とスピード」である。
2008年以降は、ソーシャルメディアが人と企業の関係を変える「ソーシャルシフト」が起こった。そして2020年頃からコロナショックに伴い、多様な生き方を選択できる「ライフシフト」が始まっている。ソーシャルシフトとライフシフトそれぞれのキーワードは「共感と信頼」「自律と対話」だ。
知識社会にマッチした組織では、人間性への回帰と人間的でクリエイティブな経営モデルが重要とされる。知識社会でめざしたい組織像は次の3つである。顧客の幸せを探求し、常に新しい価値を生み出す「学習する組織」。社会の幸せを探求し、持続可能な繁栄を分かち合う「共感する組織」。そして、社員の幸せを探求し、多様な人が自走して協働する「自走する組織」だ。
では理想の組織を実現するにはどうしたらいいのか。「統制」から「自走」へのシフトは、システム思考を研究するダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」がベースになる。これは(1)関係の質→(2)思考の質→(3)行動の質→(4)結果の質→(5)関係の質という循環であり、ポイントは関係からスタートすることだ。
「関係の質」を高めるための一歩は対話である。率直に話し合う場をつくり、信頼関係を築く。次に「思考の質」を高め、前向きな気持ちとアイデアが生まれる土壌をつくっていく。つづいて「行動の質」を高め、一人ひとりが自律的に行動でき、問題が起きたときには助け合えるような環境をつくる。この循環によって組織のパフォーマンスはおのずと高まり「結果の質」が実現する。さらには強い結束が生まれるといった高次の「関係の質」につながっていく。
「関係の質」を高めるためのベースになるのが「心理的安全性」である。これは、まわりの評価を恐れることなく、自分の意見や想いを発言できる環境を指す。メンバーからの評価や、人間関係のリスクを感じない生産性の高い職場であり、これこそがサブタイトルでいう「やさしいチーム」である。そうしたチームには共通して「均等な発言機会」や他者の感情を読み取る「社会的感受性」の高さがある。
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