2010年頃、BtoBの領域では、マーケティング活動よりも営業活動が重視される傾向が強かった。BtoCと違って有効なチャネルが少なく、郵送やFAXによるDM、展示会、業界紙への出稿が主なプロモーション施策だった。
ところが、インターネットの普及によって顧客行動は大きく変わった。米国のコーポレート・エグゼクティブ・ボードが2012年に発表したThe Digital Evolution In B2B Marketingという調査資料では、「BtoBでは顧客の購買プロセスの57%が、営業担当者に会う前にすでに終っている」という事実が明らかにされている。顧客行動の変化に伴い、私たちは営業・マーケティング活動を変えていかなければならないのだ。
BtoBマーケティングプロジェクトの進め方について、著者が過去に支援したシステム開発企業、M社の事例をもとに解説していこう。M社は、3年間の取り組みの結果、リード数を約30倍に増やした。
最初のステップは、経営課題・戦略から逆算してマーケティング活動の目的・目標を定めることだ。M社はテレアポを中心としたアウトバウンド施策で商談を獲得し、業界4位についていた。しかしテレアポでリーチできる数には限りがある。業界1位、2位をめざすには、新しい顧客獲得チャネルを開拓する必要があった。
そこで「新しい顧客獲得チャネルを開拓し、業界1位、2位になること」を目標に、マーケティングプロジェクトを開始した。
経営課題に基づいて目的・目標を定めたあとは、意思決定者ならびに「顧客への解像度が高い」メンバーを交えたチームを編成する。顧客への解像度が高い人とは、「顧客が何を考えているのか」「どんなことが関心ごとなのか」「日頃、どんな形で情報収集を行っているのか」を精緻に理解できている人のことだ。こうした人がいれば、仮説や戦略・施策の精度が大きく上がる。
BtoB企業ならば、商談で顧客と接している営業パーソンや、電話やメールで顧客とやり取りし、ニーズを把握しているインサイドセールスの担当者などに加わってもらうといいだろう。M社のプロジェクトでは、
3,400冊以上の要約が楽しめる