起こった出来事は同じでも、それをどう解釈するか、どんな言葉で表現するかによって、捉え方やわき起こる感情は異なるものだ。
著者がNHKの新人アナウンサーだったとき、取材対象者との行き違いがあり、直前になって取材を断られてしまったことがあった。落ち込む著者に、当時の上司は「今回のことを教訓に、次につなげればいいよ」と声をかけてくれた。この言葉にどれだけ救われたことだろう。この上司が「失敗」を「教訓」と言い換えてくれたからこそ、仕事に対するモチベーションを下げることなく、失敗を次に生かすことができたのだ。厳しく叱責されていたら、アナウンサーの仕事を続けることはできなかったかもしれない。
言葉は、人の気持ちを左右する。相手の記憶に残るようないい言葉を贈ろうとする配慮が、あなたの印象を決め、相手との強い信頼関係を築く力となる。
部下がミスをしたとき、あなたはどんな言葉をかけるだろう。感情をあらわにして、怒鳴りつけたり、叱責したりしていないだろうか。
まずは、「怒り」の裏にある残念な気持ちや悲しみ、悔しさなどといった感情をコントロールしよう。その上で、具体的にどうしてほしいのかを相手に伝える。言いづらいことや相手が不快に思うかもしれないことならば、「あなたのために正直に伝えるね」などと前置きするのもいいだろう。相手に望むことを具体的に伝え、それが相手にとってプラスになるのだということを理解してもらえるように、思いやりをもって表現することが大切だ。
日本人は遠回しな表現を好む傾向がある。だが、ビジネスの場面では、あいまいな表現は避けるべきだ。
特に「Yes」「No」は、はっきり伝えなければならない。「できること」と「できないこと」を明確に伝えなければ、誤解を生み、トラブルに発展しかねないからだ。
「無理です」と言いにくいなら、「難しいです」くらいの表現でも構わない。あとになって「やっぱりできませんでした」となる方が、相手にとっては迷惑だ。
あいまいな表現は、相手の都合のいいように解釈されてしまいがちだ。ビジネスシーンでは自分の意思をストレートに伝えるよう心がけたい。
「この仕事、すぐにやってもらえる?」と言われたとき、「すぐに」の感覚は人によって異なる。著者自身、出勤直後に上司から「この仕事、すぐにやってもらえる?」と言われ、「午前中いっぱいくらいかな」と勝手に解釈したところ、相手の真意は「今すぐに」だったようで、「遅い」と叱られてしまったことがあった。
人は言われた言葉を自分の思い込みで受け止めてしまうものだ。誤解を防ぎ、相手に自分の意図を正しく理解してもらうためには、内容をできるだけ具体的に、省略せずに伝えることが大切だ。
「この仕事、すぐにやってもらえる?」よりも、「この仕事、優先的にやってもらえる?」と言った方が、今やっている仕事の手を止めて先にやってほしいことが伝わる。さらに「この仕事、○○時までにやってもらえる?」と具体的に言えば、相手は指示を計画的に実行できるようになるだろう。
相手に何かを依頼するとき、
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