「営業ができる人」というと、おそらく多くの人が「トーク」や「プレゼンテーション」のうまい人をイメージするだろう。だが、必ずしも「話がうまい人=営業がうまい人」というわけではない。
キーエンス時代、著者の部下に、口下手だが実直な性格の「カワちゃん」という人物がいた。あるときカワちゃんは、お客様に寄り添って信頼を得られるだろうという理由で、超重要案件の営業担当者に抜擢された。「なぜ彼を担当にするのか?」という意見もあったが、カワちゃんは見事、お客様から契約をいただいた。しかも、競合の見積もりのほうが安かったにもかかわらず、お客様はキーエンスを選んでくれたのだという。
カワちゃんがお客様からの信頼を勝ち得たのは「相手の話を聴ける人」だったからだろう。口下手を自覚していたカワちゃんは、徹底して「聴きに行く」姿勢をとっており、お客様から課題を聞き、解決のための最適な提案を積み重ねていた。
お客様の話に誠実に耳を傾けられれば、口下手であっても営業はうまくいく。むしろ、話すことが得意なのに成果が出ないのならば、まずは聴くことを意識してみよう。
あなたは、営業という仕事の意味を考えたことはあるだろうか。単に「営業=自社の製品・サービスを売ること」とせずに、視座を高めて営業の仕事を捉え直してみよう。
著者は営業の仕事を「お客様が事業・ビジネスを進める第一歩目をつくる仕事」と定義している。たしかに「製品やサービスを売ること」は必要だ。だがそれだと主語が「自分」であるため、目標達成のために無理矢理売り込みを行う、不要なオプションをつけて売上を伸ばそうとするなど、独りよがりな行動をとってしまいがちだ。
一方で、主語を「お客様」にすると、営業としての姿勢が変わってくる。お客様はどのようなビジネスをしていて、今後どうなりたいのか。お客様のビジョンを実現するために、自社製品・サービスはどのように貢献できるか。そうしたことを踏まえて動けるようになるはずだ。
「お客様が自社商品を買ってくれたら嬉しい」のは当然のこと。「お客様のビジネスの成長に役に立てて嬉しい」と思えたら、営業はもっと楽しくなるだろう。
法人営業をするなら、営業先である「法人」を正しく理解しておく必要がある。ここでは、2つのポイントを押さえよう。
1つ目は、法人の存在理由。法人は、利益を出すために存在している。
2つ目は、法人が製品やサービスを購入する理由。法人は、その製品やサービスが会社の利益につながるから購入する。つまり「利益を出すための投資」として、製品やサービスを購入しているのだ。
この2つのポイントを踏まえて、提案時には「投資対効果を証明すること」を意識しよう。投資対効果のある提案をするためには、何より先にお客様の「課題(困りごと)」や「どうしていきたいか」を聞くこと。その上で、あなたが提案する製品やサービスがどう役に立てるか、どのような利益をもたらせるかを伝える。そうすると、お客様は前のめりに話を聞いてくださるはずだし、安易な値引き合戦から抜け出せるだろう。
ポイントは、
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