キャリアは過去・現在・未来の時間軸のなかで捉え、自ら構築していくものである。そのために本書は、具体的に取り組むことのできる戦略設計・意識改革・自己研鑽・組織貢献といった思考法を集めた「キャリアナレッジ」を提唱する。ベースとなる考え方は次の3点だ。
・キャリアとは、転機のときだけに考えるものではなく、日々つくりあげていくものである。自分らしく生きるために、日頃からキャリアについて考えることを習慣にしよう。
・主体的に生き、稼ぐことから逃げない。何を大事にしたいか考え、正しく悩み、そして、まず行動・実践してみること。自分らしい人生を選ぶことを諦めない姿勢が重要である。
・組織を大切にする。個人と組織とを対立させるのではなく、共に活かし合うパートナーとして考える。これからは、個人も組織も互いに活かせるような人が、未来をつくっていく。
時代の変遷とともに、キャリアに対する社会の考え方は変化してきた。令和の時代は、2つの歴史的ショックからスタートした。ひとつは2019年、経済界の重鎮が相次いで終身雇用の制度疲労に言及したことによる「日本型雇用ショック」。もうひとつは、2020年に突如世界の成長にブレーキをかけたコロナ・パンデミックである。
こうした状況を踏まえ、令和の時代のキャリアは「関係性の時代」と表現できる。個人と組織の関係性を改めて問い直し、これからのキャリアを一人ひとり構築していく時代になった。
そのときに鍵を握るのは、キャリア形成をめぐる「戦略思考」である。それは、働くことや生きることを通じ、自身が成し遂げたいことを問い直し、自ら主体的にキャリアを形成していくための中長期的な行動設計を意味している。
キャリア形成に関する考え方は、大きく2つに分類される。目の前のことに一生懸命取り組むことでキャリアは形成されていくと考える「現状行動型キャリア形成」と、将来のキャリアプランを描き、なりたい姿に向けてやるべきことに取り組んでいく「未来創造型キャリア形成」である。
どちらも一長一短あるが、それぞれの良さを連携させていくハイブリッド型のキャリア形成が、本書がベースにしている「現代版プロティアン・キャリア形成」である。目の前のことを大切にしながらも、なりたい自分に向けてキャリアを形成していくという考え方だ。
まずは、これまで投資した期間(時間)と積み重ねてきた経験(中身)を掛け合わせて「自分の強み」を棚卸しする。次に、現在から未来を見据えて「自分は何を強みにしていくか」を定める。このように始めて、長期・分散・積立の視点で自らのキャリア戦略を考えることがポイントである。
次いで有効なのが、自己(Self)・状況(Setting)・社会(Society)からなる3Sというフレームワークだ。
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