今すぐ転職を考えていない人のための キャリア戦略
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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2022年04月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書の重要なキーワードのうち、特に注目すべきは「キャリア資本」だ。スキル、語学、資格、職歴といった「ビジネス資本」を中核として、「社会関係資本」と「経済資本」から構成される概念である。人生100年時代において、いかにキャリア資本を蓄積していくのか、それを戦略的に考えるのが本書のタイトルにある「キャリア戦略」である。

従来の雇われ続ける働き方では、個人のキャリア戦略を組織に委ねていたと言える。今後は、個々人が主体的にキャリア形成に取り組むことが大切になってくる。

そのときのひな形を提供するのが、現状行動型と未来創造型のキャリア形成のそれぞれの良さを連携させたハイブリッド型「プロティアン(変幻自在な)・キャリア形成」である。これは、ギリシア神話の神プロテウスをメタファーとした、変幻自在にキャリアを形成していく最先端の知見であり、本書のベースだ。

わたしたちがまず為すべきことは、自身のキャリア資産の棚卸しだろう。そして、今後どのような資産を増やしていくか考えることだ。そのときに、障害となるのが、お金に対する漠然とした不安ではないか。そこで、自身の価値観とお金の関係をしっかりと見つめ直してみる必要がある。もしかしたら、世間の風潮に振り回されているだけで、わたしたちの幸福とお金はあまり関係ないかもしれない。

同時に、本書は小さなところから自らお金を稼ぐことを奨励している。そうした経験から、雇われるだけでは得られない、稼ぎ抜く自信が湧いてくるはずだ。

ライター画像
しいたに

著者

田中研之輔(たなか けんのすけ)
法政大学キャリアデザイン学部教授
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
明光キャリアアカデミー学長
UC.Berkeley元客員研究員、University of Melbourne元客員研究員、日本学術振興会特別研究員。一橋大学大学院社学研究科博士課程修了。博士(社会学)。専門はキャリア論、組織論。
社外取締役・社外顧問を30社歴任。個人投資家。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。プログラム開発・新規事業開発を得意とする。
著書は26冊。『辞める研修 辞めない研修』(ハーベスト者)、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(筑摩書房)、『ルポ不法移民』(岩波書店)、『井家の経営』『走らないトヨタ』(以上、法律文化社)、『都市に刻む軌跡』(新曜社)など。またキャリア・シリーズとして、『プロティアン』(日経BP)、『ビジトレ』(金子書房)、『プロティアン教育』(株式会社キャリアナレッジ)、『新しいキャリアの見つけ方』(アスコム)がある。訳書に『ボディ&ソウル』(心理者)、『ストリートのコード』(ハーベスト者)など。
その他、日経ビジネス、日経STYLEなどメディア多数連載。

本書の要点

  • 要点
    1
    キャリアにも戦略思考を持つことが重要だ。それは、自ら主体的にキャリアを形成していくにあたり、中長期的な行動を設計することを意味する。
  • 要点
    2
    キャリア戦略の要点は、第三者視点からみた個々人の価値である「キャリア資本」を中長期で蓄積していくことだ。組織での日々の業務を「こなす」のではなく、キャリア資本を「ためる」へと発想を転換する。
  • 要点
    3
    これからのキャリア形成は、組織にキャリアを任せる組織内キャリアから、自律型キャリアへの転換が不可欠だ。

要約

キャリア戦略を立てる

キャリアナレッジ
JGalione/gettyimages

キャリアは過去・現在・未来の時間軸のなかで捉え、自ら構築していくものである。そのために本書は、具体的に取り組むことのできる戦略設計・意識改革・自己研鑽・組織貢献といった思考法を集めた「キャリアナレッジ」を提唱する。ベースとなる考え方は次の3点だ。

・キャリアとは、転機のときだけに考えるものではなく、日々つくりあげていくものである。自分らしく生きるために、日頃からキャリアについて考えることを習慣にしよう。

・主体的に生き、稼ぐことから逃げない。何を大事にしたいか考え、正しく悩み、そして、まず行動・実践してみること。自分らしい人生を選ぶことを諦めない姿勢が重要である。

・組織を大切にする。個人と組織とを対立させるのではなく、共に活かし合うパートナーとして考える。これからは、個人も組織も互いに活かせるような人が、未来をつくっていく。

いま求められるキャリア戦略

時代の変遷とともに、キャリアに対する社会の考え方は変化してきた。令和の時代は、2つの歴史的ショックからスタートした。ひとつは2019年、経済界の重鎮が相次いで終身雇用の制度疲労に言及したことによる「日本型雇用ショック」。もうひとつは、2020年に突如世界の成長にブレーキをかけたコロナ・パンデミックである。

こうした状況を踏まえ、令和の時代のキャリアは「関係性の時代」と表現できる。個人と組織の関係性を改めて問い直し、これからのキャリアを一人ひとり構築していく時代になった。

そのときに鍵を握るのは、キャリア形成をめぐる「戦略思考」である。それは、働くことや生きることを通じ、自身が成し遂げたいことを問い直し、自ら主体的にキャリアを形成していくための中長期的な行動設計を意味している。

長期・分散・積立のキャリア戦略

キャリア形成に関する考え方は、大きく2つに分類される。目の前のことに一生懸命取り組むことでキャリアは形成されていくと考える「現状行動型キャリア形成」と、将来のキャリアプランを描き、なりたい姿に向けてやるべきことに取り組んでいく「未来創造型キャリア形成」である。

どちらも一長一短あるが、それぞれの良さを連携させていくハイブリッド型のキャリア形成が、本書がベースにしている「現代版プロティアン・キャリア形成」である。目の前のことを大切にしながらも、なりたい自分に向けてキャリアを形成していくという考え方だ。

まずは、これまで投資した期間(時間)と積み重ねてきた経験(中身)を掛け合わせて「自分の強み」を棚卸しする。次に、現在から未来を見据えて「自分は何を強みにしていくか」を定める。このように始めて、長期・分散・積立の視点で自らのキャリア戦略を考えることがポイントである。

3Sでキャリア戦略を考える

次いで有効なのが、自己(Self)・状況(Setting)・社会(Society)からなる3Sというフレームワークだ。

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要約公開日 2022.07.29
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