大企業には長い歴史があり、ブランドがある。商品点数が多く、広告やPRが同時に展開される。認知度、興味、好意度、商品をおく棚。大企業の売上には、数多くの要因が絡んでいる。
本書は「実施した施策が、売上にどう寄与したか」という従来型のプロセスではなく、売上(目的変数)はどのような要因(説明変数)で上下動しているのかを解明し、要因の構造化に挑む。売上に影響を与える主要因の構造を明らかにし、最短距離で目的地に到達するための「地図」を提供することが、本書の目的だ。
大航海時代、アメリカ海域へ初めて到達したコロンブスは、一級の地図製作者としても成功をおさめていた。著者は、本書がマーケティング業務の「地図」となり、効果的・効率的に売上を向上させるヒントになると期待している。
マーケティングのゴールを「買ってもらうこと」と単純化すると、重要な要素はブランド想起のされやすさ(メンタルアベイラビリティー)と、買い求めやすさ(フィジカルアベイラビリティー)の2つに集約できる。
「お茶を飲みたい」と思った時に、頭の中でサントリーの伊右衛門が思い浮かんだとする。これが第一想起だ。飲むためには購入する必要がある。大抵のコンビニに伊右衛門は置いてあるため、いつでもどこでも買える。伊右衛門が売れている理由は、両方の要素が高い状態で保たれているからだと言える。
「消費者は二度評価する」。こう提起したのは、商品開発に関するグループインタビューの礎を築いた梅澤伸嘉氏だ。「買う前に買いたいと思わせる力」をコンセプト力、「買ったあとに買ってよかったと思わせる力」をパフォーマンス力とし、この2軸で新商品の売上パターンを4象限で表現できる。売上にはトライアル購入とリピート購入がある。コンセプト力がトライアル購入、パフォーマンス力がリピート購入を規定する。
コンセプト力が強く、パフォーマンス力が弱いと、トライアルで購入したものの、期待外れでリピートでの購入が起こらない。コンセプト力もパフォーマンス力も強い、右肩上がりの理想的な売上はごく一部に限られる。
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