永守流 経営とお金の原則

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永守流 経営とお金の原則
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永守流 経営とお金の原則
出版社
出版日
2022年01月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

著者の永守氏はグループ従業員が11万人を超え、2022年3月期に連結売上高2兆円に迫った日本電産を一代で築き上げた、まさに名経営者である。

日本電産はモーターメーカーであり、技術に強みのある会社だ。そんな技術系の会社のトップである著者は「キャッシュこそが財務の基本であり、経営の原点である」と本書で繰り返し強調する。経営の危機に幾度となく直面する中で、財務の大切さを骨身に染みて思い知ったそうだ。

著者のコスト意識とキャッシュへのこだわりは強烈だ。例えばコスト意識を社内に浸透させるために、ゴミ箱に捨てられているものを全て新聞紙の上に出させ、使えそうなものがたくさん捨てられていないかを調べる。経営者である著者自らが経費を1円単位でチェックする。バランスシートの数字は常に頭に叩き込んでいるなど、その行動は徹底している。

それだけのことをトップに立つ経営者自らが実践しているのだから、社内に強いコスト意識とキャッシュへのこだわりが生まれるのは納得である。そういった姿勢こそ、企業が成長する基盤になっているのだと本書を読んで合点がいった。

本書から「会社を成長に導く土台となる財務戦略」とは何なのか学ぶことができる。ものづくりと会社経営を通じて培われた「永守流」の真髄とたぎる思いを感じずにはいられない、熱量の高い一冊だ。

著者

永守重信(ながもり しげのぶ)
1944年京都生まれ。職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒業。
73年、28歳で従業員3名の日本電産株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
80年代から国内外で積極的なM&A戦略を展開し、精密小型から超大型までのあらゆるモータとその周辺機器を網羅する「世界No.1の総合モーターメーカー」に育て上げた。
代表取締役会長兼社長(CEO)、代表取締役会長(CEO)を経て、2021年より代表取締役会長。
2014年、世界のすぐれたモータ研究者の顕彰と研究助成を目的とした公益財団法人永守財団を設立、理事長に就任。
また18年には京都先端科学大学を運営する学校法人永守学園理事長に就任。ブランド主義と偏差値教育に偏った日本の大学教育の変革と、グローバルに通用する即戦力人材の輩出に情熱を燃やしている。
著者に『「人を動かす人」になれ!』(三笠書房)、『情熱・熱意・執念の経営』(PHP研究所)、『成しとげる力』(サンマーク出版)、『人生をひらく』(PHP研究所)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業で成功したければ、財務の感覚を磨くことは不可欠だ。意欲があり、製品が良くても、確固とした財務戦略がないと会社は潰れる。「そろばんを持たない経営者」になってはならない。
  • 要点
    2
    キャッシュが企業価値のすべての源泉であり、様々な経営判断をする際の最も重要な基準となる。
  • 要点
    3
    経費のムダは、一つひとつは小さくても積み重なると収益を確実に圧迫する。
  • 要点
    4
    資金の調達先は「借りにくいところから借りろ」というのが鉄則である。借りにくいところほど諸経費や金利が安いからだ。

要約

お金の戦略が必要だ

経営は夢とロマンと「怖がり」
DNY59/gettyimages

著者が日本電産を立ち上げたのは1973(昭和48)年7月、28歳の時だ。

日本電産は世界の40余りの国・地域でビジネスを展開し、グループ従業員は11万人を超える巨大企業へと成長した。

著者は経営者として大きな夢とロマンを持っている反面で「怖がり」でもあると語る。

会社が潰れるのが怖いからこそ、事前に徹底的に調査し、最悪の事態に対応できるよう備えるのだ。財務の足元をしっかり固め、簡単に危機に陥らない土台があるからこそ将来に向けた成長戦略が打てる。

数字を常に把握し、いざという時に備えてキャッシュ(現金)をどう確保するか日頃から想定して原則を定めておくことは欠かせない。

「現金がこれだけあり、売掛金はこれだけ、一方で借入金はこれくらい……」と数字がすぐ頭に浮かぶだろうか。

経営者であればバランスシートの数字は常に頭に入れておかなければならない。「最後に鍵を握るのはキャッシュ」というのが財務の原則である。キャッシュが尽きるから企業は潰れる。極端に言うと、どんなに赤字が出ていても、キャッシュに余裕があるなら絶対潰れないのだ。

投資計画を考える上でもバランスシートにどんな影響が出るかしっかり捉えておくことが重要だ。

例えば研究開発投資をする場合、投資したお金を将来どのように回収するか、無理な投資でバランスシートが大きく崩れないか、将来を見通した上で的確に判断することが大切だ。

数字を駆使し自分の言葉で語る

起業で成功しようと思うなら、財務の感覚を磨くことが不可欠だ。意欲があり、製品が良くても、確たる財務戦略がなければ、会社は潰れる。「そろばんを持たない経営者」になってはならない。

金融機関から融資を引き出す際にも数字の裏付けが必要になってくる。将来のビジョンを語る際も漠然と「こうなりそうだ」ではダメで物事をすべて計数で捉えることが大切なのだ。

「いい製品ができた。資金さえあれば、量産して次々に売れる」と言っても、それは説得力を持ち得ない。

金融機関で働く人たちは、数字でものを見る教育を徹底して受けている。だからこそ彼らを説得する際に、数字を駆使して自分の言葉で語ることが大事だ。例えば「電気自動車(EV)が本格的に普及する2025年以降、当社のEV用駆動モーターシステムの出荷台数は350万台に達する。2050年には、世界中の工場が無人化・自動化される。そこで稼働する500億台ものロボットに使われるモーターは天文学的な数になるだろう」といった具合に説明する。

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要約公開日 2022.09.15
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