著者が日本電産を立ち上げたのは1973(昭和48)年7月、28歳の時だ。
日本電産は世界の40余りの国・地域でビジネスを展開し、グループ従業員は11万人を超える巨大企業へと成長した。
著者は経営者として大きな夢とロマンを持っている反面で「怖がり」でもあると語る。
会社が潰れるのが怖いからこそ、事前に徹底的に調査し、最悪の事態に対応できるよう備えるのだ。財務の足元をしっかり固め、簡単に危機に陥らない土台があるからこそ将来に向けた成長戦略が打てる。
数字を常に把握し、いざという時に備えてキャッシュ(現金)をどう確保するか日頃から想定して原則を定めておくことは欠かせない。
「現金がこれだけあり、売掛金はこれだけ、一方で借入金はこれくらい……」と数字がすぐ頭に浮かぶだろうか。
経営者であればバランスシートの数字は常に頭に入れておかなければならない。「最後に鍵を握るのはキャッシュ」というのが財務の原則である。キャッシュが尽きるから企業は潰れる。極端に言うと、どんなに赤字が出ていても、キャッシュに余裕があるなら絶対潰れないのだ。
投資計画を考える上でもバランスシートにどんな影響が出るかしっかり捉えておくことが重要だ。
例えば研究開発投資をする場合、投資したお金を将来どのように回収するか、無理な投資でバランスシートが大きく崩れないか、将来を見通した上で的確に判断することが大切だ。
起業で成功しようと思うなら、財務の感覚を磨くことが不可欠だ。意欲があり、製品が良くても、確たる財務戦略がなければ、会社は潰れる。「そろばんを持たない経営者」になってはならない。
金融機関から融資を引き出す際にも数字の裏付けが必要になってくる。将来のビジョンを語る際も漠然と「こうなりそうだ」ではダメで物事をすべて計数で捉えることが大切なのだ。
「いい製品ができた。資金さえあれば、量産して次々に売れる」と言っても、それは説得力を持ち得ない。
金融機関で働く人たちは、数字でものを見る教育を徹底して受けている。だからこそ彼らを説得する際に、数字を駆使して自分の言葉で語ることが大事だ。例えば「電気自動車(EV)が本格的に普及する2025年以降、当社のEV用駆動モーターシステムの出荷台数は350万台に達する。2050年には、世界中の工場が無人化・自動化される。そこで稼働する500億台ものロボットに使われるモーターは天文学的な数になるだろう」といった具合に説明する。
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