後期制度(75歳以上の後期高齢者が入る医療制度)の負担額は膨れ上がり、年金制度も支払った額よりも少ない額しか受け取れない。さらにその傾向は加速する。国民全員に提供されるセーフティネットであるはずの社会保障制度ですら、破綻に向かっている。それが日本の現状である。
しかし、世の中の変化に先んじて政府が大転換することはない。政治の変化はいつだって世の中の変化の後追いであり、またそうあるべきだからだ。たとえ、今すぐに社会保障システムを劇的に改良したとしても、効果が出るのは40年以上も後になる。では、今の現役世代はどうすればよいだろうか。
それは、国を頼るのではなく、したたかに自分の身を守りながら、自分なりに楽しく幸せな人生をつくっていくことだ。「空気を読まない」「集団に埋没しない」「権威・権力に屈しない」そんな100%自己責任で自分勝手に生きる個人こそが、今後は生き残っていくだろう。
日本という国は政権交代くらいでは動かない。歴史が証明しているように、維新や敗戦のようなことがないと動かないのだ。
破壊なくして創造はないと語る冨山氏は、昭和型成功モデルに見る「官製内需」と「二重の保護」という2つの問題点を挙げる。
官製内需とは、日本の多くの企業や地方自治体が、自民党が古くから築き上げてきた「まかないの仕組み」に組み込まれた状態を指す。電力や建設、原子力産業を例に取ると、中央からの資金分配に護送船団行政の金融業界が連動し、地方に道路と新幹線をつくり、電気を通し、工場や発電所をつくってきた。
しかしこのモデルの問題点は、産業の新陳代謝を阻害し、経済主体の動機づけを失わせるリスクがあることだ。産業構造が変化しても、「まかない」に支えられた企業は柔軟に対応できず、政府による補助金や規制による保護にしがみつくようになる。
二重の保護とは、政府が企業を保護し、企業が個人を保護する構造だ。源泉徴収型の徴税、天引き型社会保険料の徴収、また医療や雇用、年金制度についても企業経由で個人を保証するのが基本になっている。つまり、国や自治体が全国民の個人口座に直接給付する仕組みが整っていない。
したがって、危機的状況下で個人を救うには、ひとまず規模の大小や競争力の強弱を問わず、すべての企業を支えるしかない。すると、不相応に大きな借金を抱えながらも生き延びる「ゾンビ企業」が発生し、産業の固定化が一段と進む。
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