近代経済の偉人といえば、近代経済学の父アダム・スミス、共産主義経済学を説いたカール・マルクス、マクロ経済学の創始者ジョン・メナード・ケインズの名が挙がる。実はヨーゼフ・アロイス・シュンペーターも、彼らと並んで近代経済学を代表する一人である。シュンペーターは1883年に生まれ、1950年に亡くなった。ケインズと同世代を生きた人物だ。
シュンペーターの思想は当時の主流だったマクロ経済学からは傍流扱いされており、彼はまさに孤高の思想家だった。しかし、シュンペーターの理論は、「資本主義の終焉」といわれる現代こそ見直されるべきである。
シュンペーターは「イノベーション」「アントレプレナー」といった言葉を生み出した。彼の理論の魅力は何なのか。それは「外部環境ではなく、内発的なイノベーションこそが経済と社会の進化をもたらし続ける」という考え方である。そして停滞した経済を打破していく力をもっているのだ。
ケインズは、恐慌の真っ只中において政府が積極的に経済に介入して需要をつくるべきとする「需要重視型」経済理論によって、時代の寵児となった。その後ケインズの理論は、米国の「ニューディール政策」にも取り入れられ、マクロ経済学の主流となっていく。
ケインズ経済学は短期的には景気を押し上げる効果が期待できる。一方で、財政悪化やインフレをもたらすという強烈な副作用もある。シュンペーターはこのケインズ理論に対して批判的だった。それは、ケインズが「技術や資本設備が一定」という前提のもとで経済を捉えていたためだ。シュンペーターから見たケインズ理論は、経済がもつ本来のダイナミズムを見失った短期的な救済措置にすぎなかった。
シュンペーターを再発見したのは、マネジメントの発明者ピーター・ドラッカーである。ドラッカーは、シュンペーターを「最も偉大な近代経済学者」とし、自身の思想においても多くの共通点をもつ。
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