そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。

仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる
未読
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ジャンル
出版社
出版日
2022年04月25日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネスパーソンの中には、大学で「経済学」を履修した人もいるだろう。あるいは社会人になってから教養としてしっかりと身につけている人も多いかもしれない。しかし、学んだ経済学の知識がビジネスの課題解決に直結していると自信を持って言える人は、果たしてどれほどいるだろうか。

本書は最新の経済学をビジネスに「実装」することを提案し、経済学が企業の課題解決に役立つことを具体的なテーマで紹介したものだ。

著者は「経済学のビジネス実装」を手掛ける第一人者の実務家と経済学者たち6人。「眠っている学知をビジネスに活用しないのはもったいない」と、顧客データを分析して離脱率を調べる、収益を最大化する価格を推定するなどの企業の収益に直結する取り組みを進めている。米国に目を転じると、グーグルやアマゾンをはじめ、多くの最先端企業では、経済学者の雇用が進み「経済学のビジネス実装」の成果が実証されているという。著者は日本でも「経済学のビジネス実装」を進め、成長戦略を加速すべきと説く。

「ゲーム理論」「需要分析」「消費行動」「顧客生涯価値」といった、経済学で学んだ言葉が随所に出てくる。そうした「学知」は本来、ビジネス課題解決のために活かすべきものなのだと痛感する。気鋭の実務家と経済学者たちの手による本書には、日本企業の勝ち筋と、目の前のビジネス課題解決のヒントがある。

ライター画像
山下愛記

著者

今井誠(いまい まこと)
株式会社エコノミクスデザイン共同創業者・代表取締役
1998年関西学院大学商学部卒業。金融機関を経て、株式会社アイディーユー(現 日本アセットマーケティング株式会社)にて不動産オークションに黎明期から従事。その後、不動産ファンドを経て独立。2018年株式会社ディアブル代表取締役、株式会社デューデリ&ディール取締役に就任し、不動産オークションでの経済学実装に取り組む。さらなる経済学のビジネス実装に挑むべく、株式会社エコノミクスデザインを創業。

坂井豊貴(さかい とよたか)
慶應義塾大学経済学部教授、株式会社エコノミクスデザイン共同創業者・取締役
2005年ロチェスター大学経済学博士課程修了(Ph.D. 取得)。横浜国立大学准教授などを経て、2014年より慶應義塾大学教授。専攻は制度設計(メカニズムデザイン)。東京経済研究センター業務総括理事、読売新聞読書委員、朝日新聞書評委員などを歴任。デューデリ&ディール・チーフエコノミスト、Gaudiy経済設計顧問、メルカリ・アドバイザリーボード委員。Stake Technologies Pte. Ltd.アドバイザー、日本ブロックチェーン協会アドバイザーなどを務める。主著『多数決を疑う』(岩波書店)は高校国語の検定教科書に掲載。著書は多くアジアで翻訳されている。

上野雄史(うえの たけふみ)
静岡県立大学経営情報学部教授、株式会社エコノミクスデザイン・シニアエコノミスト
2000年に関西学院大学商学部卒業。同大学で2002年に修士号、2007年に博士号を取得。2005年より静岡県立大学経営情報学部助手を経て、2021年より現職。専門は財務会計、経営分析。年金、保険、リスクのトライアングル関係を、会計学の視点で研究を進める。2011年日本年金学会創立30周年記念賞佳作、2012年生命保険文化センター優秀論文賞、2017年日本リスク研究学会大会優秀発表賞を受賞。

星野崇宏(ほしの たかひろ)
慶應義塾大学経済学部教授、株式会社エコノミクスデザイン共同創業者・取締役
2004燃東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。博士(経済学)。名古屋大学大学院経済学研究科などを経て、慶應義塾大学経済学部教授、慶應義塾大学経済研究所所長。2017年からAI研究の国内中核施設である理化学研究所AIPセンターでチームリーダーを兼任。行動経済学会会長、マーケティング・サイエンス学会理事などを歴任。45歳未満の研究者に政府が授与する最も権威のある賞である日本学術振興会賞を受賞(2017年)。内閣官房・経済産業省・内閣府・総務省などでEBPMやナッジの政策応用、政府統計の改善に関わる。NTTドコモ、マネーフォワード、サイバーエージェント、ヤフー研究所の技術顧問をはじめ、金融、流通小売、ネットサービス、広告代理店等他業種の顧問を務める。

安田洋祐(やすだ ようすけ)
大阪大学大学院経済学研究科准教授、株式会社エコノミクスデザイン共同創業者
2002年に東京大学経済学部を卒業。最優秀卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し経済学部卒業生総代となる。米国プリンストン大学へ留学して2007年にPh.D.を取得(経済学)。政策研究大学院大学助教授を経て、2014年より現職。専門はマーケットデザイン、ゲーム理論。American Economic Reviewをはじめ、国際的な経済学術誌に論文を多数発表。新聞・雑誌・オンライン媒体への寄稿(計250本以上)やテレビ番組への出演(計500回以上)を通じて情報発信に取り組む。朝日新聞論壇委員会、政府系審議会(環境省・経済産業省・財務省など計15委員会)の委員などを歴任。

山口真一(やまぐち しんいち)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、株式会社エコノミクスデザイン・シニアエコノミスト
2015年に慶應義塾大学経済学研究科で博士号(経済学)を取得。2020年より国際大学准教授。研究分野は、ネットメディア論、情報経済論、情報社会のビジネス等。KDDI Foundation Award貢献賞、組織学会高宮賞、情報通信学会論文賞(2回)、電気通信普及財団賞を受賞。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)、『ネット炎上の研究』(勁草書房)など。東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、シエンプレ株式会社顧問、日本経済新聞Think!エキスパート、総務省・厚生労働省の検討会委員なども務める他、メディアを通した一般向けの情報発信も積極的に行なっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    経済学は暮らしの改善やビジネスの利益拡大に役立つ「武器」であり、企業が経済学者をパートナーとすることは、現状を変える有効な手段である。
  • 要点
    2
    技術革新と価値観の変化のなか、「FSP―D」モデルを用いたビジネス戦略を立てることが、今後の勝負の分かれ目になる。
  • 要点
    3
    顧客への投資額は顧客生涯価値で決めるべきだ。一律投資よりも、高いリターンが見込める顧客に集中投資する方が効率的である。

要約

経済学はビジネスパーソンの武器

「エンジニアリング化」する経済学

著者の1人、安田洋祐氏は経済学者とともに会社を設立し、最先端の経済学のビジネスへの実装に取り組んでいる。顧客データの分析や望ましい価格の推定など、企業収益に直結する事業ばかりだ。

米国は1990年代から経済学をビジネスに活用し、大きな成果を上げている。一方、日本はまだ十分とは言い難い。そこで、ビジネスパーソンにも最新の経済学の学知にもっと「貪欲」になってもらいたいと考え、5人の経済学者とともに本書をしたためた。

経済学は「データの扱い方を知る」「市場の仕組みを理解する」といった、現実を把握する物差しとしてのサイエンスにとどまっている節がある。しかし最新の経済学は学知というサイエンスにとどまらず、ビジネスへの実装に向け「エンジニアリング化」している。

経済学は、暮らしの改善やビジネスの利益拡大に役立つ「武器」である。そして、企業が経済学者をパートナーとすることは、現状を変える有効な手段である。

需要分析は第三の選択肢(安田氏)
Hanasaki/gettyimages

具体的な「武器」として「需要分析」を紹介する。

事業で利益を増やすには、売上を増やすかコストを減らすか、または両方同時に行うかだ。売上を増やすには、商品の付加価値を高めることを考えなければならない。結果、多くの企業はコストを減らすことを選択する。

しかし、経済学は第三の方法を提示することができる。「ほとんどの商品は、価格が上がれば需要は減る」という「需要法則」は、経済学の中でも最もシンプルかつ普遍的な法則のひとつである。

例えば1000円の商品を10%値上げして1100円にしたことで、販売量が1万個から20%減の8000個になったとしよう。1個当たりの平均コストが800円だとすると、利益はどう変わるだろうか。

・値上げ前の利益=(1000-800)円×1万個=200万円

・値上げ後の利益=(1100-800)円×8000個=240万円

商品1個当たりの利幅(マージン)が増加したことで、利益が増える。

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要約公開日 2022.08.26
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