著者の1人、安田洋祐氏は経済学者とともに会社を設立し、最先端の経済学のビジネスへの実装に取り組んでいる。顧客データの分析や望ましい価格の推定など、企業収益に直結する事業ばかりだ。
米国は1990年代から経済学をビジネスに活用し、大きな成果を上げている。一方、日本はまだ十分とは言い難い。そこで、ビジネスパーソンにも最新の経済学の学知にもっと「貪欲」になってもらいたいと考え、5人の経済学者とともに本書をしたためた。
経済学は「データの扱い方を知る」「市場の仕組みを理解する」といった、現実を把握する物差しとしてのサイエンスにとどまっている節がある。しかし最新の経済学は学知というサイエンスにとどまらず、ビジネスへの実装に向け「エンジニアリング化」している。
経済学は、暮らしの改善やビジネスの利益拡大に役立つ「武器」である。そして、企業が経済学者をパートナーとすることは、現状を変える有効な手段である。
具体的な「武器」として「需要分析」を紹介する。
事業で利益を増やすには、売上を増やすかコストを減らすか、または両方同時に行うかだ。売上を増やすには、商品の付加価値を高めることを考えなければならない。結果、多くの企業はコストを減らすことを選択する。
しかし、経済学は第三の方法を提示することができる。「ほとんどの商品は、価格が上がれば需要は減る」という「需要法則」は、経済学の中でも最もシンプルかつ普遍的な法則のひとつである。
例えば1000円の商品を10%値上げして1100円にしたことで、販売量が1万個から20%減の8000個になったとしよう。1個当たりの平均コストが800円だとすると、利益はどう変わるだろうか。
・値上げ前の利益=(1000-800)円×1万個=200万円
・値上げ後の利益=(1100-800)円×8000個=240万円
商品1個当たりの利幅(マージン)が増加したことで、利益が増える。
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