「モノのインターネット」とは、消費財や生産財など、あらゆるモノがインターネットに繋がるインターネットのあり方を指す。インターネットが「モノに会話させ」「モノを動かし」「モノを作り」、さらに「モノを考える」役割を担い始めたのだ。その先駆者はiPhone、iPadを生み出したアップルの元最高経営責任者スティーブ・ジョブズである。iPhoneを端緒に、機器を越えた消費財から生産財までインターネットに繋がり始めた。いまでは、3Dプリンターやウェアラブル機器(身につけるスマート機器)が開発され、農業機械、交通機械、産業機械などの生産財メーカーがこぞってネットサービス型製造業へ転換を図っている。
生産財に「モノのインターネット」が普及すればどんなメリットがあるだろうか。例えば、農業機械などはインターネットやGPSを使った自動運転ができるほか、故障の予防検知、各車両の適切な配置や稼働状況の把握まで実現できるようになる。2020年頃には高速道路上でスマートカーによる自動運転が可能になるとされている。周りの車や信号機とのコミュニケーション機能やインターネットのクラウドサービスとの交信機能の強化がこうした動きを下支えすることになるだろう。
グーグルやアマゾンなどのIT企業は生産財の産業インターネットにも参入し、製造から配送まで「消費財・生産財のサプライチェーンのすべて」を「モノのインターネット」により自動化する動きが拡大し続けている。さらには、ネットサービス型産業化が、官公庁、流通業の店舗、娯楽施設など「施設をもつあらゆる産業」へ波及している。「モノのインターネット」時代の店舗は、個々の顧客の趣向を熟知し、店舗の近くに来た顧客の店舗誘導、興味をもちそうな商品紹介を行うようになっている。
「モノのインターネット」が生み出す社会を、著者は「スマート工業社会」と呼んでいる。モノの価値は、モノ自体ではなく、ソフトウェアが創り出すサービス価値へ移行する。例えばiPodで買いためた音楽をiPhoneやパソコンでもネットから自由に視聴できるという形だ。製造業はモノの販売ではなく、ソフトウェアがつくり出すサービスで収益を得るように構造を変えていかなくてはいけない。つまり「モノ支配論理」から「サービス支配論理」への転換である。
この世界観がすべてのモノで達成されると、音声応答など機器の側にまるで生き物のような擬人的進化が促されると著者は予測している。
「モノのインターネット」の時代の到来とともに、全産業が変わり始めている。その特徴は、産業全体のネットサービス型産業化の進展である。例えば、東レは、NTTグループと共同で、肌着にチップを埋め込んだウェアラブル肌着を研究している。スマートフォンに心拍数が表示されるなどの「ネットサービス型繊維業」をつくり出す途上にあると言える。
ネットサービス型産業の成長の裏には、既存の産業から大量の失業者が発生するという負の側面もある。また、社会のパラダイムシフトに伴い、女性の社会進出が加速する中で、掃除代行やベビーシッターをネットで注文するという、新たなクラウドソーシングの産業が繁栄し始めている。
では、消費スタイルはどんな変化を遂げていくのだろうか? 成熟社会においては、
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