やらかした時にどうするか

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やらかした時にどうするか
出版社
出版日
2022年06月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「失敗したくない」というのは、誰もが心に持つ願望だろう。「やらかし」に気づいた瞬間、いてもたってもいられなくなってしまう。過去の失敗を思い出して叫び出したくなる。また失敗したらどうしようと不安にかられる――。そんな経験がある人は多いはずだ。

失敗に振り回されずにすむ、何もかもうまくいく人生は、人類の夢といってもいい。だが、それは不可能だ。なぜなら小さなミスは避けられないし、「絶対にうまくいくこと」ばかり続けていたら、新しいものは生まれないからだ。

本書を著した畑村洋太郎氏が提唱する「失敗学」とは、失敗しないための学問ではない。創造的であるために、失敗を前向きに捉えようとする学問だ。畑村氏は工学を専門とする研究者・技術者であり、大学で長く教鞭をとった指導者でもあった。自ら新しいものを創造し、また学生が新しいものを生み出せるように教える立場であるからこそ、失敗を恐れることなく物事に取り組む技術が培われたのだろう。そしてその技術は、工学を専門とする人のみならず、創造的でありたいすべての人の役に立つはずだ。

現代は、次々に直面する未知の事態に対応していかなければならない時代だ。本書を読んで、小さな失敗から多くを学ぶ術を身につけ、取り返しのつかない失敗を防ごう。そうすれば、失敗を恐れず、どんどんチャレンジできるようになるはずだ。そして数々の「やらかし」を糧に、ますます成長していけるに違いない。

ライター画像
池田明季哉

著者

畑村洋太郎(はたむら ようたろう)
1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)、『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)、『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    大失敗をしてしまった時は、逃げることで自分を守ろう。失敗を見つめるのは、時間が経ち、前向きなエネルギーが貯まってからでいい。
  • 要点
    2
    大失敗を回避するためには、誰かの失敗談を聞き、自分が同じように失敗するシーンをリアルに想像するのが有効だ。
  • 要点
    3
    挫折から立ち直る時にこそ、体験的知識を獲得できる。自分の頭で考え、未知の課題に対処できる力を身につけるために、安全を確保した状態でどんどん失敗すべきだ。

要約

失敗学とはなにか

果敢にチャレンジできる自分になる

現代は失敗に厳しい時代であるため、失言によってたちまち立場を失う有名人が後を絶たない。一般人であっても、軽い気持ちでSNSにのせた内容が批判され、一生残る「デジタル・タトゥー」になってしまう場合もある。

そんな時代にあって、著者が発案した「失敗学」の必要性は増している。失敗学は「失敗しないための学問」ではない。「創造的(クリエイティブ)に生きるための哲学」である。

どんなに気をつけていても、失敗からは逃れられない。それに「絶対に失敗しないように」とばかり考えて過ごしていたら、成功する機会も成長するチャンスも失い、人生はつまらないものになってしまう。

失敗は避けられないのだから、「絶対に失敗したくない」と恐れないこと。それよりも、失敗を前向きに受け入れ、「なぜ失敗したのか」「この失敗からどんなことが学べるのか」を徹底的に分析・整理して、その後の自分の人生の糧にすることが大切だ。失敗学とは、過去の失敗を分析・整理して糧にすることを学び、取り返しのつかない大失敗の起こる可能性を下げることで、「チャンスだと思ったら果敢にチャレンジできる自分」になるための学問である。

取り返しのつかない失敗を乗り越える

自分を守るために「逃げる」
Sam Edwards/gettyimages

とんでもない大失敗をしてしまった時は、全力で逃げるのが正解だ。もちろん、ひき逃げなど、人としての倫理が問われる場合は例外である。

ここでいう「逃げる」とは、「大失敗をしてしまった自分をつい責めてしまう自分自身の追及から逃げる」ということだ。言い換えれば、衝動的に死を選ばないこと。うつ状態になることを回避するとともに、気力と体力を回復することを最優先にしよう。

失敗によるうつ状態は突然やってくる。その状態から抜け出せるかどうかは、失敗直後の衝撃をいかにうまく受け流して、どれだけ早くもとの精神状態に近いところまで回復できるかが勝負になる。具体的な逃げ方としては「他人のせいにする」「愚痴を言う」「気晴らしをする」の3つがおすすめだ。

エネルギーが貯まるのを待つ

大失敗から自分を責め、自滅してしまいそうになったら、まずは失敗を誰かのせいにしよう。自分の頭のなかだけで、一時的に「この失敗は、わたしのせいじゃない!」と考える。

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要約公開日 2022.09.21
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