CHANGE 組織はなぜ変われないのか

未読
CHANGE 組織はなぜ変われないのか
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2022年09月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

新型コロナウイルスの流行によって引き起こされたさまざまな変化をはじめ、世界はいま、大きな変化を次々に経験している。こうした中で「組織変革が追いつかない」と悩むビジネスパーソンは多いのではないだろうか。

著者によると、その原因はそもそも「人間の性質と、現代型組織の標準的なあり方は、このような激しい変化に対処するようにはできていない」からだ。そのことを明示したうえで、激変する世界に適応し、組織として進化する方法を説くのが本書である。

著者は、ハーバード・ビジネス・スクールの伝説の名誉教授、ジョン・P・コッター氏を中心とする3人だ。本書の核となるのは、人間の性質、現代型組織のあり方、そしてリーダーシップに関する研究である。この3本柱で構成される「変化の科学」を活用して、人を動かし、DXやリストラ、M&Aなどといった変革を適切に進める方法を、事例を交えて解き明かしている。

全体を通して説かれているのは、「急激な変化を受け入れ、積極的に変化を追求する姿勢」と「多種多様な立場にある人がリーダーシップを発揮すること」の重要性だ。著者らがコンサルティング業務を通じて間近で見てきた実例をふんだんに紹介し、大きな成果を上げる企業とそうでない企業の違いをわかりやすく説明する実用的な書として、ぜひ多くのビジネスパーソンに読んでほしい。

ライター画像
山下愛記

著者

ジョン・P・コッター(John P. Kotter)
ハーバード・ビジネス・スクール松下幸之助記念講座名誉教授。受賞歴を持つビジネスおよびマネジメントのソートリーダー。マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学卒業後、1972年からハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を執る。1981年、当時としては史上最年少の34歳で正教授に就任。2008年、コッター・インターナショナルを設立。主な著書に『企業変革力』(日経BP社)、『第2版 リーダーシップ論』『幸之助論』『カモメになったペンギン』『ジョン・P・コッター 実行する組織』(以上、ダイヤモンド社)などがある。

バネッサ・アクタル(Vanessa Akhtar)
コッター・インターナショナル ディレクター。エンゲージメントに関する複雑な変革プロジェクトに携わり、R&Dを推進する。教育学博士。

ガウラブ・グプタ(Gaurav Gupta)
コッター・インターナショナル ディレクター。インドの経営コンサルティング会社、Kaパートナーズ創設者。顧客に対し戦略を実行に移す支援をグローバルに行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    組織が十分なスピードで変化するためには、多くのメンバーの「生存チャネル」の過熱を防ぐとともに、「繫栄チャネル」を活性化させる必要がある。
  • 要点
    2
    現代型組織は変化が苦手だ。変化に対応するためには、安定的で効率性の高い「現代型組織」と、機敏で適応力の高い「ネットワーク型組織」、それぞれの特性をあわせもつ「デュアル・システム」をつくるのが効果的だ。
  • 要点
    3
    組織上層部の役割は、社内のあらゆる部署や組織階層の人たちのリーダーシップを引き出しやすい環境をつくることだ。

要約

変化を支える「3つの柱」

3つの柱から成る「変化の科学」

個人や企業が長期にわたって大きな成果を上げ続けるためには、世界が複雑化し、変化の速度が増し続ける状況に対処しなければならない。今を生きる私たちは、複雑で大規模な変化を、これまでより頻繁に、これまでより速いペースで、これまでより複雑な環境で実現させる必要に迫られているのだ。

そんな中、新たに「変化の科学」とでも呼ぶべき学術的成果が蓄積されつつある。この科学は「人間の性質についての研究」「現代型組織に関する学術的研究」「変革のリーダーシップに関する研究」の3つの柱から構成されている。それぞれについて簡単に解説する。

1つ目の柱:人間の性質についての研究
fizkes/gettyimages

1つ目の柱は、人間の性質についての研究である。

人間には「生存チャネル」と「繫栄チャネル」と呼ぶべきメカニズムが備わっている。「生存チャネル」は、絶えず脅威に目を光らせるレーダー・システムのようなものだ。このレーダーが脅威を察知すると、脳内化学物質が放出され、エネルギーと集中力がみなぎって脅威を素早く取り除こうとする。大口顧客からのクレームに即座に対応できるのは、生存チャネルが働いたおかげだ。生存チャネルが活性化して緊張が高まった状態が長引くと、チャンスに気づいたり、冷静かつ創造的に物事を考えたりする能力が低下しやすくなる。

一方、「繁栄チャネル」は、脅威ではなく機会に目を光らせるレーダーだ。このレーダーが新たなチャンスを察知すると、情熱や興奮が高まり、イノベーションとコラボレーションにつながる。

今日の組織がスピーディーかつ賢明に変化するためには、メンバーの「生存チャネル」が過熱しないようにするとともに、「繫栄チャネル」を活性化させる必要がある。これは決して簡単なことではない。変化のスピードが増す中、人々の生存チャネルは過熱する一方だからだ。

ただし「生存チャネル」は過小であればあるほどよいわけではない。むしろ、「生存チャネル」が適切に機能していると、「繁栄チャネル」も活性化しやすいことがわかっている。「繫栄チャネル」を活性化させるためには、「生存チャネル」が過剰でも過小でもない状態をつくるのがベストなのだ。

2つ目の柱:現代型組織に関する学術的研究

2つ目の柱は、現代型組織に関する学術的研究だ。現代型組織が生まれたのは、規模が大きく複雑性の高い組織を築いて大量消費市場に対応するためだ。この組織はピラミッド型である。ミドルマネジャーがマネジメント・プロセスを牽引することで、高い効率性と安定性を実現している。

こうした現代型組織は変化を苦手としている。多くの規則や方針、手続き、計画が備わっていて、強い標準化志向をもっているためだ。

まずはこうした現代型組織の限界を知り、問題の原因を把握しよう。そして、組織をどう変えれば「安定性・効率性の向上」と「スピード・機敏性の向上」を両立させられるか検討するのだ。

3つ目の柱:変革のリーダーシップに関する研究

3つ目の柱は、変革のリーダーシップに関する研究、つまり変化に適応しようとする組織と個人に関する研究である。この研究によれば、リーダーが次の4つの原則に従うと、多くの人たちに行動を起こさせやすくなる。

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要約公開日 2022.12.02
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