3ヶ月前に部署に配属された課長に、主人公はあからさまに目をつけられ、理不尽な扱いを受けていた。気が弱く、抵抗することもできない主人公は、会社に向かう途中で激しい動悸や蕁麻疹に襲われるまでになっていた。毎日、今日こそは会社を辞めるぞと決意し続けているものの、いざ課長を前にすると、それを口にする勇気がなくなってしまう。会社を辞めてしまって本当に生きていけるのかという不安もあり、主人公は課長の顔色をうかがいながら鬱々とした日々を過ごしていた。
そんなある日、主人公は軽妙な関西弁を話す会社の清掃員に声をかけられる。その親しみやすさに主人公が思わず自分の心情を吐露すると、清掃員は「生きる上で一番大切なことは、本当につらいときに『助けて』と口に出して言えることやねんで」と語る。そして、退職を決める前にまずは「相談」してみてはどうかと促す。
この言葉に勇気づけられた主人公は、意を決して課長に現在の自分の苦しい心境を打ち明けるが、「うつになるやつは周囲の迷惑を考えていない」「トラブルを起こして辞めると次の就職も決まらない」と課長は責める言葉ばかりを口にする。退職という逃げ道まで断たれたと感じた主人公は、涙を浮かべ謝るばかりだ。
突然、先程の清掃員が乱入する。清掃員は部下の気持ちをないがしろにする課長を罵倒しながらゾウに姿を変え、長い鼻で課長を締め上げ、何度も壁に打ちつけた。
その姿を見て、主人公は清々しい気分で会社を辞めることを告げた。
清掃員は、実はインドの神様ガネーシャであった。ガネーシャには様々なご利益があるが、特に重要なのは「障害を取り除く神」であるということだ。ガネーシャはこれまでも数々の偉人の前に現れ、その夢を叶えてきたのだという。しかし、神様の世界で「もとから才能のある人間にのっかってるだけ」と評されたことに腹を立て、ゼロから偉人を育てるために、「平凡力」の抜きんでた主人公のもとに降臨したのだ。失敗すればガネーシャはゾウに生まれ変わり、名前にゾウのつく食べ物しか食べられなくなってしまう。
ガネーシャはさっそく主人公を偉人へと育て上げるため、主人公の夢を聞く。ところが、主人公には夢と呼べるものが一切ない。さしものガネーシャでも、かなえるべき夢のない人間相手では手の打ちようがない。
とんでもない大飯喰らいのガネーシャはその食費を賄うためにも、衝撃的な一言を放つ。「自分、今日辞めた会社に戻りや」。
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