解剖学者の養老孟司氏は、自然のなかで暮らす覚悟を取り戻す方法として、都会と田舎の二拠点生活を提案する。コラムでは、二拠点生活を「二足の草鞋」と表現している。
東日本大震災が起こった際、「自然は脅威だ」とよく言われたが、大自然の恐ろしさは今さら言うほどのことではない。自然を定義するならば、「人間がつくったものではないもの」という一言に尽きる。
本当の自然に身を置いて暮らすことは人間にとって危険である。人が都市をつくったのも、自然の脅威から身を守ろうとしたからだ。都会とは、人が安心を得るためにつくられた要塞のようなものなのだ。
要塞のなかで暮らしていると、人間が特別な存在だと勘違いして、人間の身体もまた自然であることを忘れてしまう。大自然を管理することなどできないのだから、自然とともに生きるという覚悟をもっていなければならない。都市生活を続けていくなかで、その覚悟が薄れているのではないだろうか。
覚悟を取り戻すには、自然のなかで暮らす機会をつくることだ。理想は都会と田舎の両方に拠点をもつ「二足の草鞋」である。一生かけて歩むべき「この道」や、一生住み続けられる「この場所」はそう簡単に見つからない。ならば、いくつかの「この道」を探せばいい。二足の草鞋を履くことで、また違う風景が見えてくるだろう。
佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役の佐々木常夫氏は、「強くなければ生きていけない やさしくなければ生きる価値がない」という、小説家・レイモンド・チャンドラーの言葉を挙げた。
誰しも、困難に直面したり、競争を勝ち抜かねばならなかったりする場面がある。それを乗りこえるには「強さ」が必要だが、それだけでは不十分だ。
人は誰かとともに生きている。相手を思いやる「やさしさ」がなければ、信頼も愛情も得られず、本当の意味で幸せになることはできないだろう。
コラムニストの天野祐吉氏は「からっぽのバケツほど、大きな音を立てる」ということわざを挙げている。大きい声で相手を言い負かそうとしている人ほど意見の中身がないというのはよくある話だ。
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