2020年の日本の名目GDP(国内総生産)は、アメリカ、中国に次いで世界第3位。一見、経済大国のようだが、この数値は一定期間に国内で生み出された付加価値の総額であるので、人口の多さに影響される。国の豊かさを比較する目安として用いられる「一人当たりGDP」で見てみると、2021年のランキングで日本は28位だ。2000年に2位だったことを考えると、日本の豊かさは大きく後退していると言える。
要因は3つある。1つ目は産業改革の遅れだ。かつて日本がリードしていた携帯電話などの通信機器の分野では中国や台湾にその座を奪われ、半導体製造の分野でも台湾や韓国に水を開けられている。さらに、電気自動車への転換で自動車産業の上位キープも危うく、再生可能エネルギーの開発でも大幅な遅れを取っている。
要因の2つ目は、国内購買力の低下だ。IMF(国際通貨基金)による2021年の国別ランキングで、日本の「一人当たり購買力平価GDP」は36位だ。「失われた30年」と呼ばれる1990年から2020年、日本の物価は上がらず、企業は利益を削らざるを得なかった。結果、賃金も上がらず消費者は安いものを求め続けた。それがまた企業の低収益を招き、賃金の上昇を阻む……。そんな悪循環の「デフレスパイラル」に陥った。将来への不安を解消するため、多くの人が貯蓄に動き、消費に回るお金がさらに少なくなってしまったのだ。
3つ目の要因は労働賃金の低さである。OECD(経済協力開発機構)が公表する世界の平均賃金データによると、2021年の日本の平均年収は433万円で、OECD加盟国35か国中22位。直近20年間の伸びは1%未満に過ぎない。この間に韓国は40%を超える伸びを示し、19位に浮上。日本の労働賃金はお隣の韓国に抜かれてしまっているのだ。
「いまの現役世代は年金をもらえないのでは?」と疑問に思ったことがある人は多いはずだ。2019年に金融庁が「2000万円の金融資産が必要」との報告書を公表したことに端を発し、いわゆる「老後2000万円問題」が浮上した。
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