人を見極めるのは難しい。人材採用ならその後の社運を、パートナー選びなら自分の人生を左右するほどの大きな影響を与えるアクションであるにもかかわらず、多くの人が経験則や勘に頼っている。これはとても恐ろしいことではないだろうか。
「答えがない世界だから仕方ない」「人を見る目なんてセンスだから鍛えようがない」と言いたくなる人もいるだろうが、これらは誤解である。人を見る目は科学的に捉えることができるし、トレーニングすることも可能だ。
本書では、スイスの超高級ヘッドハンティング集団で経験を積んだ著者が「人を選ぶ技術」を伝授する。本書で提示される技術は、相手の深層領域をのぞき込み、その人の本質や可能性を見極めるものだ。この技術を磨くための鍛錬は、早くから意識して取り組んだ人が有利になる。
「人を見る目」を身につければ、所属組織がより良いものになるだけでなく、自分自身の幸せにもつながる。人を見抜き、見立てる力を身につけようと試行錯誤するうちに、自分自身を見抜き、見立てる力もまた上達していくからだ。その結果、「自分自身に対しての期待値」と「他人が自分へ持つ期待値」を正確に見抜けるようになり、自分と相手の期待値を超えるための努力ができる。
人を見る目があぶり出してくれるものは、大きく分けて2つある。「人としての優秀さ(できる奴・できない奴)」と「人としての害の有無(いい奴・いやな奴)」だ。
「人としての優秀さ」は「優秀」と「平凡」の2つに、「人としての害の有無」は「無害」と「有害」の2つに分かれる。優秀さを縦軸に、害の有無を横軸にとると、人を分類する4象限が生まれる。それぞれ解説しよう。
パターン(1)は優秀で無害な人だ。この人材を仲間にするために「人を見る目」を習得すると言っても過言ではない。体格を理由にイチロー選手の獲得を見送ったメジャー球団のように、さまざまなバイアスによって見立て違いをしてしまっては致命傷になる。
パターン(2)は平凡で無害な人だ。エネルギーをかけず、期待しすぎず、心地よい距離感で付き合っていけばいい。
パターン(3)は平凡で有害な人だ。有害ではあるものの、その有害さを隠す狡猾さがないため、自然と距離をとることができるだろう。
パターン(4)は優秀で有害な人だ。このタイプはもっとも厄介である。実績があるため、ポジションから外したり辞めさせたりするなどの判断が遅れる。その間に毒が会社の中に回り、組織崩壊を引き起こしかねない。
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