集中とは、そもそもどんな状態なのだろうか。
アメリカの心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー」という概念を紹介しよう。フローは、人が完全に物事にのめり込んでいて、時間感覚がなくなるような状態を指す。推理小説に熱中しているとき、友だちとおしゃべりを楽しんでいるとき、プラモデルをつくっているとき……程度の差こそあれ、フローになった経験がある人は多いだろう。
実は、とりわけ集中力を必要としそうなビリヤードや卓球、バドミントン、ボクシングなどのスポーツでも、選手が本当に集中しているのは試合時間の1割から半分程度だ。熟練したアスリートたちでさえ、本当に集中できる時間は極めて短い。残りの時間はリラックスしつつも、すぐ集中に入れるよう「モードをキープ」している。
本書では、試合やタスクに取り組んでいる状態を「持久」、雑念がまったく入らない状態を「集中」と呼ぶ。持久している時間の中に「集中」を上手に振り分けるのが、集中力アップのコツである。
「私たちの脳は筋肉のように鍛えることができる」と、ベストセラー『スタンフォードの自分を変える教室』の著者、ケリー・マグゴニカル氏は説いている。
では、どうすれば「集中脳」を鍛えられるのか。本書において「集中力を鍛える」とは、「一定の時間に課題やタスクに取り組むための持久力」と「その時間内で集中する時間を適切に分配する力」を鍛えることを指す。3時間の試験を受けるなら、まず3時間は机に座って、試験問題に取り組む持久力が必要だ。3時間の持久力ができたら、「集中」の時間を増やして、適切に分配する力を養う。
持久力を鍛えたいなら、毎日、まとまった時間を特定のタスクに費やすようにするのが一番だ。好きな小説を1時間かけて読むのもいい。慣れないうちは10分もしないうちにスマホを触りたくなってしまうだろうが、やがて慣れてくる。
「集中」時間の増加や配分のトレーニングとしては、問題集などのアウトプットを短時間で処理するのが有効だ。サッカーボールでリフティングをする、オートテニスや卓球のマシンを使う、瞑想するなども、いいトレーニングになる。
まったくやる気の出ないときは誰にでもあるものだ。しかしそこでサボってしまうと、ズルズルとサボり続けてしまいかねない。
対処法は簡単だ。やる気がないときでも、とにかくタスクに向き合えばいい。たった5分間だけでも構わない。
人間の脳には「作業興奮」という作用がある。まったくやる気がないときでも、無理やり作業をはじめると次第にやる気が高まってくる――これが「作業興奮」だ。最初は気が乗らなくても、なんとかやり始めると、気がついたら1時間経っているはずだ。
作業興奮が働かず、5分間でやめてしまっても問題ない。「5分間はタスクと向き合った」のと「完全にサボった」のとでは大違いだからだ。
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