著者が「1ページ思考」に出会ったのは、25歳で初めて転職したP&Gである。入社時は、紙おむつ「パンパース」のマーケティングを担当するアシスタント・ブランドマネージャーとなったものの、まったく仕事についていけなかった。マーケティング担当者の仕事は、各部署から集まる意見をもとにチームとしての提案をまとめ、新製品の市場投入などのプロジェクトを進めることであった。しかし、当時の著者は、情報を整理して自分の意見を発信するスキルはなく、様々な人を巻き込んでプロジェクトを進めた経験もなかった。
入社から半年が経ったころ、話したいことを3、4行に箇条書きした紙をミーティングに持っていった。すると、これまでと違って少しうまくいった。この経験によって、著者は「議論がすり合わないときのパターン」に気がつくこととなる。
例えば、各メンバーが思うプロジェクトの目的がずれているときや、各自が持つ情報が不均衡だったときだ。営業は「小売店や卸店のニーズに応えること」を第一だと考える。一方で、研究開発は「優位性のある製品を導入すること」を優先しているという具合だ。これでは議論は当然噛み合わない。それぞれが自分たちの目線や持っている情報で「何をすべきか」を決めてしまうと、結論は違ってしまう。
では情報を参加者に共有すればどうか。「小売店が棚替えで重視する条件を考慮しなければ、製品を置いてもらえない可能性もある」といった点をみんなが把握できる。
それぞれの情報を共有し、目的と目線を合わせて「何をすべきか」を明確にしていき、ミーティングで実現する。著者がめざしたのはそうした仕組みだ。参考になったのはP&Gの「社内メモを1ページにまとめる習慣」である。これを自分流にアレンジすることで、建設的な議論ができるのではないかとひらめいた。「1ページ」にまとめることで、思考のプロセスが鍛えられた実感があったのだ。
「1ページ」に必要なのは、主に次の4項目である。
(1)会議の目的(この時間で何を達成すれば成功なのか)
(2)背景(議論のベースとして知っておきたい情報)
(3)討議ポイント(議論して合意すべき主要なポイント)
(4)ネクストステップ(段取り、誰がいつまでに何をするのか)
議論がすり合わない原因は、みんなの考える目的がずれているか、背景として各人が持っている情報に偏りがあるかである。だから討議に入る前に「目的」をはっきりさせ、「背景」として同じ情報を持つことが極めて重要だ。
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