言葉は、自分の感情を正確に、過不足なく伝えるために使うものだ。だが、言葉を尽くしてもうまく伝わるとは限らない。
伝わり方のレベルを細分化すると、(1)不理解・誤解、(2)理解、(3)納得、(4)共感・共鳴の4段階に分けられる。納得と共感・共鳴のレベルに至るのは決して簡単なことではない。
なぜ言葉は伝わらないのか。どうすれば伝わる言葉を生み出せるのか。
カギとなるのは、あなたの頭の中に生まれている「内なる言葉」だ。相手の胸に響く言葉を生み出すためには、書いたり話したりする「外に向かう言葉」そのものを磨くのではなく、「内なる言葉」に幅や奥行きを持たせる必要がある。
頭に浮かぶあらゆる感情や考えは「内なる言葉」によってもたらされている。その事実に気付き、「内なる言葉」に意識を向けよう。「今自分が何を考えているのか」「頭の中にどんな言葉が生まれているのか」を正確に把握することで、「外に向かう言葉」が自然と磨かれていき、言葉に重さや深さが生まれる。
「内なる言葉」に意識を向ける方法として、ここからは著者オリジナルのメソッドを紹介する。
「外に向かう言葉」を充実させるには、物事を考えるときに使う「内なる言葉」を豊かにする必要がある。言葉は思考の上澄みでしかないため、内なる言葉の強化なくして、外に向かう言葉を磨くことはできないのだ。
内なる言葉を磨く唯一の方法は、「自分が今、内なる言葉を発しながら考えていることを強く意識した上で、頭に浮かんだ言葉を書き出し、書き出された言葉を軸にしながら、幅と奥行きを持たせていくこと」である。このプロセスは、「内なる言葉」の解像度を上げる行為だと言い換えられる。
「内なる言葉」の解像度が低いと、自分の考えを正確に把握できない。一方、「内なる言葉」の解像度が高いほど、自分の考えが鮮明になる。「うれしい」「悲しい」といった感情をそのまま捉えるのではなく、「内なる言葉」を手がかりとして、感情の根源へと踏み込んでいこう。自分の言いたいことを正確に理解しない限り、「外に向かう言葉」が磨かれていくことはあり得ないのだ。
著者が思考を深めるために行なっている作業は、3つの段階に分かれる。
第1段階は、頭の中の「内なる言葉」を書き出し、同じものをグループ化して思考のクセを把握する段階。第2段階は、アウトプットされた「内なる言葉」を俯瞰して、考えを拡張する段階。第3段階は、あえて逆方向に考えたり、特定の人の立場で考えてみたりして、化学反応を起こす段階だ。
この「思考サイクル」を繰り返せば、「内なる言葉」の語彙が増え、物事を深く考えられるようになる。思考に厚みが生まれ、「外に向かう言葉」がより深く、重いものになるだろう。
「アウトプットする」「拡張する」「化学反応させる」の3つのステップは、7つのプロセスで構成されている。「仕事で成功する」や「自分がこれからどのように生きていきたいか」など、自分にとって今最も考えるべきテーマを決めて読み進めてほしい。
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