多くの人が話し方に悩んでいる。それは、話し方によって自分自身が評価されてしまうことが多々あるからだ。日常生活でも仕事でも、相手からの評価は重要だ。話し方は人生の行方を左右し得る重要なテーマだ。
昨今のビジネスパーソンの多くは、自分の意見を発したり、目立ったりしたがらない。そこには「できる奴、頭がいいと思われたいわけではないが、ダメな奴・頭が悪いとは思われたくない」という本音が隠れている。このような考え方は、話し方のコンプレックスへつながっている。
こうした悩みは、「数学的な話し方」によって解決することが可能だ。著者の仕事は研修講師として「話す」ことだが、この活動を続けられているのは話し方で信頼を得てきたからに他ならない。「話し方」を学んだことのない著者が、分かりやすい話し方ができるのは、学生時代に学んできた「数学」によって育まれた数学的思考によるものだ。
話し方を決めるものは、思考だ。その人の考え方や思考は、話し方から透けてしまう。いくら口調や発言などの「話し方」を変えたところで、思考を変えなければ、根本的な解決にはならない。数学的思考を身につければ、話し方は自動的に変わる。話し方が変われば、人生も変わるはずだ。
本書における数学の定義はこうだ。「数学とは、説明である」。
単に問題の答えを導くだけでは数学をしていることにはならない。例えば、代表的な公式である三平方の定理を、テストで正解を出すための道具としか見ていなければ、それは数学ではない。これを「直角三角形の性質を説明しているもの」と捉えて、どう説明しているかを探求することこそが数学なのだ。
「数学的思考」とは、「数学をするときに頭の中でする行為」のことである。かつて私たちは数学の授業中、次のような5つの行為を組み合わせて物事を考えていたはずだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる