やりがいがなく、だれにでもできて、スキルも自信もつかない――。そんな仕事をするのはしんどいものだ。だが、そうした仕事も工夫次第で「自分にしかできない仕事」になり、評価につながる。
著者が入社1年目で任されたドラマのAD(アシスタント・ディレクター)の仕事も、雑用だらけの「だれにでもできる仕事」であった。不満を募らせていたとき、監督から急に、翌日の撮影で使う「サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当」を用意してこい、と言われた。ただの小道具で、画面にはほとんど映らないし、ストーリー進行にも関係ないものだ。正直面倒だと思ったが、なんとか調達するしかない。退勤後、学生時代にアルバイトをしていた居酒屋の厨房を借りて弁当をつくりはじめた。
とはいえ女子高生の手づくり弁当なんて想像がつかない。「なんか違うんだよな……」と頭を抱えて唸っていると、ふと思いついた。「サッカー部のマネージャーなんだから、おにぎりをサッカーボールに見立てたらどうか?」
海苔を貼ったまるいおにぎりが2つ、弁当箱に並ぶ。いい感じだ。そう思うと他のおかずも気になりはじめ、ウィンナーはタコに、玉子焼きもキレイに……とやっているうちに朝の5時になっていた。弁当箱をつかんでロケ場所に直行したところ、弁当を見た監督が「ちょっと台本変えよう。この弁当をストーリーのメインにしたい」と言ってくれた。だれでもできる仕事が、ちょっとした工夫で「佐久間の仕事」に変わったのだ。
だれにでもできる小さな仕事を、いかに「自分にしかできない仕事」にして、信用とチャンスに変えるか。どうすれば「よくある雑務」を「自分の仕事」にできるのか。その問いが、仕事をおもしろくする。
「もう少し力をつけてから……」と、憧れの仕事や興味のある仕事にチャレンジしないのはもったいない。とはいえ、自信がなくて怖じ気づく気持ちも、失敗して恥をかきたくない気持ちもよくわかる。著者も「絶対にできる」と思えるまで動けないタイプだった。
でも、どれだけキャリアを積んでも準備万端にはならないものだ。それに、どんなチャレンジも、早ければ早いほどいい。そのほうが失うものが少なくて済むうえ、多くを得られるからだ。
うまくいかなくても大丈夫。あなたの挑戦は相手の記憶に残るだろう。すぐには結果につながらなくても、後になって「そういえば、あのときの……」と思い出してもらえて、チャンスにつながるかもしれない。
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