少子高齢化にともなって、生産年齢人口は1995年をピークにゆるやかに減少している。パーソル総合研究所は、2030年には7073万人の労働需要に対し、644万人もの人手不足が生じると推定している。
「企業が求職者を選んでいた時代」は終わりを告げ、「企業が求職者に選ばれる時代」が到来した。とにかく応募者数を増やせば確率論的に優秀な人材が採用できるはずだ——そんな「幻想」を手放すときが来た。なるべく多くの応募を集めてふるいにかける手法は、労働人口減少と相性が悪い。大量のエントリーが集まればミスマッチも増えるし、志望度の低い求職者のエントリー選別に膨大な手間がかかることにもなる。
これからは、求職者と企業とのマッチング精度を高めていく新しい採用手法が必要だ。本選考に進む前に相性を確かめ合う「ソフトな選考(ソフトセレクション)」が必要とされるのは出会いの確実性を上げるためだ。
デジタル化が進み、伝えたい情報を、伝えたい人にだけ届けることが可能になった。広告の分野では、テレビや街頭に広告を打って「数で勝負」していたものが、届けたい顧客のスマホにだけ広告を出す「マッチで勝負」の時代に変わりつつある。採用でも同じような方向の進化が見られる。
新しい採用手法は「マーケティング」とよく似ている。企業は商品であり、求職者は消費者だ。企業は、求職者から選ばれる立場へと変わりつつある。求職者が仕事を選ぶ際に、何を重視するのか。それは、就職活動時の景気に大きく左右される。最近では収入、出世といった条件よりも、「自分の望む仕事ができるかどうか」で企業が選ばれる傾向がある。
例えば、ビジネスSNS「Wantedly」では、会社理念、課題、職場のカルチャーを切り口として求職者の共感を誘い、気軽に話が聞ける「カジュアル面談」を通じて採用につなげてきた。結果的に、マッチング率や定着率の向上にも結びついている。
労働人口の減少と求職者の意識の変化により、採用戦略の見直しは喫緊の課題となった。採用のスタートは「今」だ。自社にとって価値が高く、一緒に働きたいと思える人材は、そう多くはない。いい人材は引く手数多なのだから、今の職で活躍して転職する理由がないことが多く、何らかの事情で転職を始めてもすぐに次の職が決まってしまう。いい人材を採るためには、人材が公の採用市場に出てくる前に接点を持っておかねばならない。
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