「学校に行きたくないなぁ……」、誰もが一度はそう思ったことがあるだろう。苦手な教科の授業があるから、嫌な子に会いたくないから、など理由は色々あるにせよ、「嫌なこと、やりたくないことがあるから行きたくない」というのは共通しているはずだ。はたして、学校にはガマンして行くべきなのだろうか。もしなにも制約がなかったら、どんなふうに学ぶのがいちばんいいのか。
悩む僕は、久しぶりに友人のダイヤ・アイダ(会田大也)に再会した。「ミュージアム・エデュケーター」をしている彼は、「この本、おもしろいよ」とユニークな視点を持つ先人たちを教えてくれる、大切な友人だ。
今抱えている疑問や問いを彼に打ち明けると、彼は「ついに泰蔵さんも冒険者になったのですね」と、一冊の本を差し出した。「冒険者には、他の冒険者の声が聞こえます。『冒険の書』は世界中に散らばっていて、冒険を決意した人だけ読むことができます。この本はきっと、泰蔵さんの重要な導きとなってくれるでしょう」と言い、立ち去った。
その本の表紙には、『世界図絵』(1658)と書かれていた。著者はヨハン・アモス・コメニウス(1592-1670)。今から400年前のボヘミアの歴史学者で、「近代教育学の父」といわれる人だ。「これが『冒険の書』なのか……?」その時、白い光があたりを包み、黒い人影と見たことのない風景が交錯した。目の前には高い塔のお城が見える。呆然としている僕に、一人の老人が話しかけてきた。「新しい冒険者じゃな?」彼こそが、コメニウス本人であった。
彼は「教育なくして人間は人間になることはできない」とつぶやいた。この時代は、人類史上最も悲惨な戦争のひとつといわれる宗教戦争「三十年戦争」が始まった頃で、社会は混乱を極めていた。コメニウス先生は、「世界を正しく認識したうえで、正しく語り行動できる人間こそ、社会の混乱に終止符をうち、新たな社会を創造しうる」と言う。そして先生は、すべての人にあらゆることを教えるために『世界図絵』をつくった。自然や文化をわかりやすく絵で説明したこの本は、百科事典のルーツともいわれている。
これからの教育を考える時は、教育の起源であるコメニウス先生までさかのぼる必要がある。「あらゆる人に、あらゆることを教えて人間らしくする」という大前提に疑問をもち、根本から考えなおすべきである。
メディアでは「生き残りをかけたサバイバル」とか「勝ち組、負け組」、「勝者がすべてを手に入れる」というような言葉を見かける。このような考え方のルーツは、イギリスの哲学者トマス・ホッブズ(1588-1679)にある。
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