13歳からの地政学

カイゾクとの地球儀航海
未読
13歳からの地政学
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カイゾクとの地球儀航海
未読
13歳からの地政学
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2022年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

刊行後から売れ続けているこの話題書は、世界で起こっているさまざまな出来事の背景をわかりやすく学べる一冊である。

本書は年齢不詳のアンティークショップのオーナー「カイゾク」との会話を通じて、高校生と中学生の兄妹が世界の仕組みや国同士のかけひきの裏側を7日間かけて学んでいく、というストーリーだ。そのため、肩肘を張ることなく一気に読み進めることができ、自然と学びを深められる。

著者は、国際政治記者として40カ国以上の国で、政治経済から文化に至るまで幅広く取材を行ってきた。そんな著者だからこその視点で、歴史問題の本質や、国同士の関係性を解説してくれる。「なぜアメリカが世界最強の国となったのか」「なぜ米中関係が悪化するようになったのか」「なぜ中国が南シナ海への進出を加速させるのか」といったことが、カイゾクと兄妹のやり取りを楽しむだけで見えてくる。

また、地球温暖化をポジティブに捉える側面、テロリストがヒーローになる場合など、物事を一元的に捉えていては見えてこない事柄も登場する。多元的で広い視野の必要性に気付かせてくれる一冊だ。

世界の構造を知る上でのエッセンスが詰まった本書は、子どもだけでなく大人にも読み応えがある。ロシアによるウクライナ侵略など、国際情勢が不安定な今だからこそ、地政学を教養として身に付け、世界を見る目を鍛えていくことが大切である。

ライター画像
木下隆志

著者

田中孝幸(たなか たかゆき)
国際政治記者。大学時代にボスニア内戦を現地で研究。新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを積み、世界40カ国以上で政治経済から文化に至るまで幅広く取材した。大のネコ好きで、コロナ禍の最中に生まれた長女との公園通いが日課。40代で泳げるようになった。

本書の要点

  • 要点
    1
    アメリカが超大国と言われるのは、世界の船の行き来を仕切る国だからである。
  • 要点
    2
    核兵器を最強のアイテムにする条件は原子力潜水艦、海の中からミサイルを発射する力、潜水艦を隠せる安全な海である。この形で最強のアイテムを持っているのはアメリカとロシアだけである。
  • 要点
    3
    地球温暖化も立場によって見方が変わってくる。地球温暖化によって、アジアと欧州を結ぶ最短の海上ルートである北極海航路が利用できる、北極周辺の天然資源を活用できるようになる、といった可能性もあるからだ。

要約

【必読ポイント!】 物も情報も海を通る

海を支配する最強国

なぜ、アメリカは超大国と言われるのだろうか。

スーパーに外国産の食品が数多く並んでいることから察せられるように、私たちの生活は貿易なしでは成り立たなくなっている。そして、この貿易の9割以上が船を使って行われている。島国である日本では、99%が船による貿易だ。

そして、この世界の船の行き来を仕切る国がアメリカである。アメリカは世界最強の海軍を維持するために毎年10兆円以上のお金を投じて、世界各地の海に軍艦を配置している。こんな国は世界でアメリカだけだ。

こうすることで、国同士がケンカになった場合でも勝つことができる。海をおさえていれば、トラブルになった他国の貿易を止めることで倒せる。スーパーで食べ物が買えなくなり、戦争どころではなくなるからだ。

世界で一番強い国であるというとてつもないメリットを守るために、アメリカは海軍に巨額を投じている。

ドルが世界中で使われる理由
Juanmonino/gettyimages

アメリカが圧倒的な軍事力を持っているからこそ、世界の貿易の8割では、通貨としてアメリカドルが使われている。軍事力を背景とした強い信頼だ。お金はみんなが信用するから価値がある。

そのため、最も信用のあるドルを外国が欲しがる。だからドルなしでは貿易ができない。アメリカを大嫌いな国やテロリストでさえも、ドルを欲しがっている。

アメリカが世界中から物を輸入しまくっても破産しないのは、極端に言えば、いくら買っても、ドルを印刷して支払えばいいからだ。まさに「打ち出の小づちを持っているようなもの」である。

海底でデータが盗まれる

海外へメッセージを送る時など、インターネットのデータ通信の99%は、海底ケーブルを通して行われる。

人工衛星を使うより断然早いし、海底ケーブルがなければインターネットは成り立たない。このケーブルを世界で一番張りめぐらせているのがアメリカで、2番目がイギリスである。

これだけ熱心な理由は通信量で儲けるためだけではない。「海をおさえれば、情報をおさえることができる」のが大きな理由として挙げられる。通っていくデータを管理するだけでなく、必要に応じて盗み見ることまでできてしまう。

もちろん、大事なデータは暗号化され、簡単に見られないようになっているが、人のつくった暗号は破れないはずがない。だからこそ、データが通る場所をおさえておいて、他国にとって知られたくない情報を得られるようにしているのだ。

近年でもアメリカの情報機関が、ドイツの首相の携帯電話を長期間、盗聴していたことが明らかになった。当然ドイツも捜査したが、結局うやむやになってしまった。

アメリカのように一番強い国が悪いことをしても、それを裁ける国がないというのが現実だ。日本に対しても同じようなことをしているという話もある。ただし、情報は集めればいいというものでもない。使えるものを精査しているうちに古くなってしまう可能性もある。その情報を使う側のリーダーも賢くなければ宝の持ち腐れになってしまう。

経済成長と移民

排他的経済水域も含めた海水の体積では日本は世界4位であり、立体的な高さや深さで考えれば世界でも決して小さい国ではない。経済的な存在感という意味でも大国の部類に入る。しかし、経済は成長しているとは言えない。

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要約公開日 2023.02.14
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