〈2時間で丸わかり〉 インボイスと消費税の基本を学ぶ

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〈2時間で丸わかり〉 インボイスと消費税の基本を学ぶ
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著者
出版社
かんき出版

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出版日
2022年09月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

令和5年(2023年)10月、消費税の導入以来最大といわれる改正、「インボイス制度」が導入される。ほとんどの事業者は対応と無縁ではいられない。「免税事業者」と呼ばれる売り手にとって影響が大きいことは想像に難くないが、買い手側への影響も小さいとはいえない。経理担当にかぎらず、お金に関わる証明書をやり取りする人であれば、対応が求められる可能性が高い。

何から手をつければいいかわからないという人には、本書をおすすめしたい。著者は、日経トップリーダー経営者クラブ「トップの情報CD」でレギュラーコメンテーターを務め、経理・財務に関して数々の書籍を出している税理士の吉澤大氏だ。本書では、難しくなりがちな税金の話を、インボイス制度に必要な情報に絞って分かりやすく説明している。まずは前提となる消費税の知識についての解説から始まり、インボイス制度導入後に請求書の何がどう変わるのか、インボイスを発行する適格事業者は何をすべきか、制度の基本をさらう。経理処理の手間は増え、売り手も買い手も金銭的にダメージを受けることもあるこの制度は、歓迎しづらい。だが、最適な選択肢を選ぶことで、ダメージを最小にする余地はある。そのために必要な正しい知識を、本書は与えてくれる。

インボイス制度の導入について、何となく知っているけど、そろそろきちんとした情報を調べなければ……と考えていた人にとって、まず手に取るべき1冊である。

ライター画像
鈴木えり

著者

吉澤大(よしざわ まさる)
1967年生まれ。税理士。明治大学商学部卒業。國學院大學大学院経済学研究科博士前期課程修了。本郷公認会計士事務所(現 辻・本郷税理士法人)勤務を経て、1994年に26歳で吉澤税務会計事務所を設立。現在同事務所代表およびアライアンスLLPパートナー。
税務・資金調達という自身の専門分野で経営者が抱える種々の難問に取り組む「ファイナンス用心棒」を自認し、現在、日経トップリーダー経営者クラブ「トップの情報CD」でレギュラーコメンテーターを務める。
税理士として顧問先企業の「全体最適を考慮した安定成長」に寄与するため、法務、マーケティング、不動産の有効活用などの諸問題についても、多面的に構築した専門家のネットワークを駆使して解決している。
著書に、38万部突破となったベストセラー『マジビジ PRO [図解] 会社の数字に強くなる!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のほか、『会社の財務』(日経BP社)、『はじめての「独立・起業」なるほど成功ガイド』『つぶれない会社に変わる!社長のお金の残し方』(以上、日本実業出版社)、『最新版〈2時間で丸わかり〉不動産の税金の基本を学ぶ』『一生食べていくのに困らない 経理の仕事術』(以上、かんき出版)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    インボイス制度が始まると、インボイスを発行できる適格事業者との取引でなければ、買い手は「仕入税額控除」を受けられなくなり、コストが増加する。この制度によって、免税事業者が特に大きな影響を受けると考えられる。
  • 要点
    2
    インボイス制度による負担増を、売り手の免税事業者に転嫁できない部分は買い手の課税事業者が負担することになる。インボイス制度による消費税の増税分は、売り手と買い手で「分かち合う」という意識が大事である。

要約

【必読ポイント!】 インボイス制度の基本の「き」

まずは消費税について押えよう

消費税とは、商品や提供されたサービスに対して課税される税金のことだ。消費者が払った消費税は、事業者が一定期間預かり、まとめて納税している。事業者は消費者の代わりに消費税を「納税」しているのであって、消費税を「負担」しているわけではない。

生産者、卸売業者、小売業者と、商品は流通過程で多くの事業者の手を経ることになる。そのたびに消費税が課税されていたら、1つの商品に何重にも消費税が課せられることになる。このため、事業者が納税する消費税額は、受け取った消費税額から、支払った消費税額を控除した金額となる(仕入税額控除)。

軽減税率の導入によって、複数の消費税率が存在することになり、事業者の経理処理は複雑になった。インボイス制度は、このような状況下でも正確に消費税の納税がなされるためにセットで導入されたものだ。

これまでの制度でも、先述の「仕入税額控除」(売上消費税から仕入消費税を差し引くこと)を受けるためには、帳簿や請求書等の保存が義務付けられていた。だが、請求書等に適用税率・消費税額の記載は義務付けられてはいなかった。標準課税(10%)と軽減税率(8%)が混在する軽減税率制度下では、どちらの税率が適用されたのかを明らかにする必要がある。売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるための“証明書”が「インボイス(適格請求書)」だ。

インボイス制度で何が変わる?

仕入税額控除の計算を行い、正しい金額を計算して消費税を納付するのは、小規模の事業者にとっては多大な負担だ。そのため、基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者を「免税事業者」として、消費税の申告・納税を免除する制度がある。

これまでの制度では、売り手は買い手が消費税を納税しているかを知らないまま、消費税を上乗せして払っていた。免税事業者は消費税を受け取っていながら、納税を免除されていたわけだ。

インボイス制度では、仕入税額控除の可否は「何に使ったか」だけでなく、「誰に支払ったか」でも決まることになる。インボイス制度では、支払う相手が登録された「適格請求書発行事業者」(以下「適格事業者」)でなければ、仕入税額控除ができなくなる。「適格事業者」の登録ができるのは、消費税納税義務のある「課税事業者」のみ。仕入税額控除は課税事業者の発行するインボイスの記載に基づいて計算されるようになる。

買い手から見れば、免税事業者にこれまで通りの金額を支払うと、仕入税額控除ができなくなる分コスト増ということになる。売り手側が適格事業者になるためには、課税事業者になったうえで、届出書の提出が必要だ。インボイス制度にはさまざまな特例が設けられ、届出書の提出期間にも猶予が与えられている。課税事業者だからといって、必ず適格事業者にならなければいけないわけではない。どの事業者もインボイス制度の影響を見極めたうえで、適格事業者になるべきかを選択する必要がある。

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要約公開日 2023.03.10
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