消費税とは、商品や提供されたサービスに対して課税される税金のことだ。消費者が払った消費税は、事業者が一定期間預かり、まとめて納税している。事業者は消費者の代わりに消費税を「納税」しているのであって、消費税を「負担」しているわけではない。
生産者、卸売業者、小売業者と、商品は流通過程で多くの事業者の手を経ることになる。そのたびに消費税が課税されていたら、1つの商品に何重にも消費税が課せられることになる。このため、事業者が納税する消費税額は、受け取った消費税額から、支払った消費税額を控除した金額となる(仕入税額控除)。
軽減税率の導入によって、複数の消費税率が存在することになり、事業者の経理処理は複雑になった。インボイス制度は、このような状況下でも正確に消費税の納税がなされるためにセットで導入されたものだ。
これまでの制度でも、先述の「仕入税額控除」(売上消費税から仕入消費税を差し引くこと)を受けるためには、帳簿や請求書等の保存が義務付けられていた。だが、請求書等に適用税率・消費税額の記載は義務付けられてはいなかった。標準課税(10%)と軽減税率(8%)が混在する軽減税率制度下では、どちらの税率が適用されたのかを明らかにする必要がある。売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるための“証明書”が「インボイス(適格請求書)」だ。
仕入税額控除の計算を行い、正しい金額を計算して消費税を納付するのは、小規模の事業者にとっては多大な負担だ。そのため、基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者を「免税事業者」として、消費税の申告・納税を免除する制度がある。
これまでの制度では、売り手は買い手が消費税を納税しているかを知らないまま、消費税を上乗せして払っていた。免税事業者は消費税を受け取っていながら、納税を免除されていたわけだ。
インボイス制度では、仕入税額控除の可否は「何に使ったか」だけでなく、「誰に支払ったか」でも決まることになる。インボイス制度では、支払う相手が登録された「適格請求書発行事業者」(以下「適格事業者」)でなければ、仕入税額控除ができなくなる。「適格事業者」の登録ができるのは、消費税納税義務のある「課税事業者」のみ。仕入税額控除は課税事業者の発行するインボイスの記載に基づいて計算されるようになる。
買い手から見れば、免税事業者にこれまで通りの金額を支払うと、仕入税額控除ができなくなる分コスト増ということになる。売り手側が適格事業者になるためには、課税事業者になったうえで、届出書の提出が必要だ。インボイス制度にはさまざまな特例が設けられ、届出書の提出期間にも猶予が与えられている。課税事業者だからといって、必ず適格事業者にならなければいけないわけではない。どの事業者もインボイス制度の影響を見極めたうえで、適格事業者になるべきかを選択する必要がある。
3,400冊以上の要約が楽しめる