悪気もなく失礼なことを言ったり、何度も約束を破ったり、すぐに感情的になったり……。こうした“付き合うのが大変”な人たちの言動は、性格や人間性の問題だと考えられてきた。ところが、最近ではその中にかなりの割合で、脳にある特性を抱えている人がいるとわかってきている。そのひとつが“発達障害”だ。
著者は精神科医として30年以上働く中で、発達障害の特性を持つ人と、そうではない“定型発達”の人とでは、物事の受け止め方や感じ方が異なることを実感してきた。発達障害は先天的な脳の特性であるから、本人の努力でその言動を改めるのは容易ではない。
発達障害の人が身近にいると、接し方に苦慮することもあるだろう。特に、子どもは症状が強いケースが多いため、親御さんの苦労は大きい。
発達障害を持つ本人も大きなストレスを感じていることが少なくない。本人は、頑張っていることが多いが、周囲には理解に苦しむ言動を繰り返しているように見える。“ちょっと変わっている”と決めつけられて、いじめにあったり、叱責を受けたりする経験を繰り返して、自己肯定感が低くなりがちだ。
本書では、〝発達障害の人が見ている世界〟を紹介する。とまどってしまうような言動の理由を解説し、本人とのコミュニケーション方法も提示するとともに、本人向けの対処法についても言及する。発達障害に対する理解が進み、本人の生きづらさと周囲の人の困りごとが、少しでも緩和されることが本書の願いだ。
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