「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない。」
著者である松本零士氏は、『銀河鉄道999』の中でも講演でも、繰り返しこの言葉を若者に伝えてきた。その大きさを問わず、夢を持つことは今を生きるためのエネルギーになる。だが、夢を実現するためには努力する時間が必要だ。たとえ時間がかかっても、努力した時間は裏切らない。必ず夢をかなえるための力となる。
夢を持ったら、途中でその夢を諦めてはならない。諦めたら、そこまで努力した自分自身の時間を裏切ることになる。時間は夢を裏切らないと信じて頑張れば、時間はかかっても夢は実現するだろう。
著者は18歳の時、出版社からの依頼で九州の小倉から上京することになった。当時としては国を越えるほどの途方もない距離感に、夜行列車の長旅では緊張感で眠れなかった。車窓から漆黒の闇を眺めていると、手を振って送り出してくれた二人の弟の面影、「苦しくなったら帰っておいで」と送り出してくれた母親の優しい笑顔が浮かんでは消える。
不安ではあったが、自分で決めた道に武者震いがする思いで過ごしていると、車外の闇夜が星の流れへと変わっていった。まるで星雲の中を走る列車。その様子に見とれていたら、星の海をバックに、この世のものとは思えない美女が窓際に座っていた。彼女は無言であったが、「あなたは弱音を吐いちゃだめよ、頑張りなさい」と語りかけているような気がした。気づけば彼女の姿は消えていた。
この女性がのちに描く『銀河鉄道999』のメーテルだ。たとえ幻であっても、自分の経験は未来の力となる。
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