多様性後進国である日本ではいま、多くの企業がダイバーシティ経営の重要性に気づき、行動を起こしている。
ダイバーシティ経営を実現するには、働き方や人事制度の改革に加え、対話を活用した組織風土の改革が不可欠だ。その理由は2つある。
1つ目は、長らく男性中心であった日本社会には、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括)への抵抗感が根強く残っているからだ。この抵抗感をなくして組織風土を改革していくためには「対話」が効果的だ。
2つ目は、多様な人とともに働くためには、「暗黙の了解」や「あ・うんの呼吸」を求める「ハイコンテクスト社会」から脱却する必要があるからだ。多様性に富んだ組織では、「言わなくてもわかるだろう」はもはや通用しない。誰にでもわかる言葉で丁寧に対話し、コミュニケーションを取る必要がある。
多様なメンバーが在籍する職場において、管理職にはダイバーシティ・マネジメントが求められる。ここでも部下一人ひとりとの「対話」がカギとなる。その理由は次の2つだ。
ひとつは、管理職はメンバー一人ひとりの事情を把握し、それぞれのモチベーションのスイッチを入れる必要があるからだ。上司と部下の1on1が急速に広まっている理由もここにある。スタッフの働き方が多様化し、テレワークの機会も増えるなかで、上司と部下の対話タイムを定例化することはきわめて合理的だ。
もうひとつの理由は、管理職は、経営層の言葉を現場に伝える役割を果たすからだ。経営理念やパーパス、ビジョン、ミッションなど、経営層から聞いたハイコンテクストな言葉を、具体的かつ明快な言葉に落とし込み、対話を通して現場に浸透させていく必要がある。
コロナ禍に子育て社員との対話軸を変えたという、キリンビールの副部長、渡辺謙信さんの事例を紹介しよう。
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