私たちの脳には、やる気になる条件がある。その条件とは、取り組む課題が「50%はうまくいく保証がされていて、残り50%はやってみなければわからない冒険」に設定されていることだ。やる気を出したいときは、自分の性格や気分のせいにするのではなく、「安全50%と冒険50%」の条件を満たすようにしよう。
たとえば、初めての人と初めての仕事をするとき、いつもより早起きをして特別な朝食をとり、新しい服を着て臨む人もいるだろう。だが、これは最適な行動ではない。仕事で「新しい課題」に臨む冒険の設定になっているのに、日常生活まで新しいことだらけで、安全が確保されていないからだ。脳のやる気を引き出したいなら、いつも通りの時間に起きて、いつも通りの食事をとり、いつも通りの服を着るのが望ましい。逆に、毎日同じメンバーと同じ作業を繰り返すときには、いつもより早起きをして特別な朝食をとって、新しい服を着て臨むとよい。
脳は、冒険し過ぎても安全過ぎてもやる気を失う性質があるのだ。
眠る前には「明日の作業、やりたくないな」と思っていたのに、翌朝起きたら苦もなく取り組めた――。仕事の資料作りなどで、このような経験をしたことがある人も多いだろう。これは、眠っているうちに海馬から大脳の側頭葉へと記憶が移され、脳に空き容量ができて、新しいことを覚える余裕がつくられたためだ。この作業によって、起きているときには解けなかった問題が解けることもある。良質な眠りは不利な状況を打破する助けになるのだ。
睡眠を知るために、ここでは「生体リズム」と「ホメオスタシス」という2つの仕組みを押さえよう。生体リズムとは、私たちの脳と体を形作る細胞が時間とともに刻むリズムのこと。ホメオスタシスとは、体の内外の変化に合わせて、体の中の環境を一定に保つ働きのことだ。
眠りに悩む人は、ホメオスタシスだけに注目してしまいがちだ。寝つきが悪いからといって、昼間に過度に運動したり、脳や体を極端に疲れさせたりしようとする。だが、この方法では悩みは解決しない。ホメオスタシスは、生体リズムの波をつくってこそ機能する。
生体リズムは、これから脳と体がどんな状態になるのかを決めるものだ。本書の目的は、この生体リズムの仕組みを知り、これから起こる脳と体の変化を先読みして行動して、睡眠の質を改善し、自然にやる気になる脳をつくり出すことである。
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