健康になる技術 大全

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出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2023年02月28日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

健康になるための情報は、世の中に無数に存在している。しかし、根拠が怪しいものや、すでに古くなり否定されているのに信じられ続けているものもたくさん含まれている。本当のところ、何が正しく、何が誤っているのか、素人には判断がつかない。だからこそ、正しい情報、知識を得たいと考える人は多いのではないだろうか。

本書は、科学的なエビデンスに基づいて健康に関する正しい情報を見極める方法を知り、知識を学ぶために、恰好の書である。前半では特に、科学的なエビデンスとは何か、健康習慣はどのように形成され、何の影響を受けるのか、上手く習慣を身につけられないのはなぜかといった点について、著者の専門分野であるパブリックヘルス(公衆衛生)や行動科学の観点から解説されている。

後半で紹介されている健康のための食事、運動、休息、感情に関する具体的な情報や方法の数々は、多くの人にとって耳の痛い話と感じられるかもしれない。だが、健康な生活を志すのであれば、しっかりと聞き入れたほうがよいだろう。自分の生活習慣を見直していくありがたい諫言として響くにちがいない。

ライター画像
大賀祐樹

著者

林英恵(はやし はなえ)
パブリックヘルスストラテジスト・公衆衛生学者(行動科学・ヘルスコミュニケーション・社会疫学)、Down to Earth 株式会社代表取締役、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任准教授、東京大学・東京医科歯科大学非常勤講師
1979年千葉県生まれ。2004年早稲田大学社会科学部卒業、2006年ボストン大学教育大学院修士課程修了、2012年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程を経て、2016年同大学院社会行動科学部にて博士号取得 (Doctor of Science:科学博士・同学部の博士号取得は日本人女性初)。専門は、行動科学・ヘルスコミュニケーション、および社会疫学。一人でも多くの人が与えられた寿命を幸せに全うできる社会を作ることが使命。様々な国で健康づくりに携わる中で、多くの人たちが、健康法は知っていても習慣づける方法を知らないため、やめたい悪習慣をたちきり、身につけたい健康法を実践することができないことを痛感する。長きにわたって頼りになる「健康習慣の身につけ方」を科学的に説いた日本人向けの本を書きたいと思い、執筆した。
2007年から2020年まで、外資系広告会社であるマッキャンヘルスで戦略プランナーとして本社ニューヨーク・ロンドン・東京にて勤務。ニューヨークでの勤務中に博士号を取得。東京ではパブリックヘルス部門を立ち上げ、マッキャンパブリックヘルス・アジアパシフィックディレクターとして勤務後、独立。2020年、Down to Earth(ダウン トゥー アース)株式会社を設立。社名は英語で「実践的な、親しみやすい」という意味で、学問と実践の世界をつなぐことを意図している。国際機関や国、自治体、企業などに対し、健康に関する戦略・事業開発、コンサルティングを行い、学術研究なども行っている。加えて、個人の行動変容をサポートするためのライフスタイルブランドの設立準備中。 2018年、アメリカのジョン・ロックフェラー3世が設立したアジアソサエティ(本部・ニューヨーク)が選ぶ、アジア太平洋地域のヤングリーダー“Asia 21 Young Leaders”に選出。また、2020年、アメリカのアイゼンハワー元大統領によるアイゼンハワー財団(本部・フィラデルフィア)が手がける、世界の女性リーダー“Global Women’s Leadership Fellow”に唯一の日本人として選ばれる。両組織において、現在もフェローとして国際的な活動を続ける。
『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』(小学館)をプロデュース。著書に、『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』(あさ出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    科学のエビデンスは、研究方法によって「質の強弱」がある。強弱を見極めるには、専門的なトレーニングが必要。特に「専門家の意見」のエビデンスの質は低いので、メディア等で展開される専門家によるコメントは、発言の出所を確認する必要がある。
  • 要点
    2
    生活習慣は個人の意志だけで変えられるものではなく、環境に強く影響される。健康に良い習慣がなかなか身につかなかったり、悪習慣がやめられなかったりするのも、社会経済的な状況や、それに基づく感情に左右されることが多いので、「自己責任」ではない。
  • 要点
    3
    エビデンスの飛躍に気をつける必要がある。特に健康な食事に関するエビデンスに多い「〇〇を食べるとXXに良い」と言った単純化された考え方は還元主義と呼ばれるものである。科学はそんなに単純ではない。
  • 要点
    4
    健康になる技術とは、食事・運動・睡眠・ストレスなどの分野で「WHAT(何を)」「HOW(どのように)」行なったら良いのか、自分の環境や特性(弱点・弱み)に合わせて実践する技術である。

要約

健康になるための考え方

エビデンスには強弱がある
Aliaksandr Zadoryn/gettyimages

世の中には「こうすれば健康になる」という情報があふれている。その中から、「真」の健康法をエビデンスに基づいて見極め、実践し続けることが、健康のために大切だ。

エビデンスは日本語で「科学的根拠」と訳され、確かな根拠があるものというイメージがあるかもしれない。しかし、実際の科学の世界は意外なほど白黒がはっきりせず、エビデンスには質による強弱がある。

エビデンスはわかりやすくまとめられていると思われるかもしれない。しかし、何十本もの論文を読んでようやくその分野の最新の知見やエビデンスの強弱、すなわち質の良し悪しがわかるようになる。

研究の質を高めるためには、膨大な文献を読み、研究者同士で議論を重ねるといった地道なプロセスが求められる。その一つひとつの研究結果の情報をまとめた科学的な証拠の集合体がエビデンスだ。

日本人の死因は、がん、心疾患、脳血管疾患が半数を占めている。一方、病気の原因をさかのぼって健康を害するリスク(危険因子)に着目する「公衆衛生(パブリックヘルス)」の観点で見ると、たばこ、食事、運動、アルコール、ストレスに関連するものがほとんどだとわかる。

本書は「生活習慣病」という言葉を避け、「慢性疾患」と表現している。「生活習慣病」と言うと、「生活習慣を改善できないことが原因となり、病気になるのは自己責任」とする考えにもつながる。しかし、人々の健康の決め手となる要因は、収入や教育レベルも含めた社会・経済的状況や、住む場所、学校・職場などの「環境」の要因が大きい。

したがって、個人の努力だけで健康的な習慣を身につけるために生活習慣を改善できなかったとしても不思議はない。それが、パブリックヘルスの考え方だ。

健康とは、「単に病気がない状態ではなく、肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあり、幸せや生きる意味を見出しながら、満ち足りた状態で生きること」である。その実現のために、健康習慣づくりに役立つ科学的なエビデンスを学ぶことが大切だ。

個人の努力で生活習慣を変えるのは困難

健康のための簡単な生活習慣として、健康的な食生活、定期的な運動、健康的な体重の管理、ほどほどの量のアルコール、たばこを吸わないことという5つを守れている人は少ない。新たな薬や治療法の開発によって様々な病気が治るようになったのに、人々の生活習慣は概して不健康なままである。社会経済的な状況、環境に影響されてしまうため、個人が健康のために生活習慣を変えるのは難しい。

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要約公開日 2023.07.05
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