世の中には「こうすれば健康になる」という情報があふれている。その中から、「真」の健康法をエビデンスに基づいて見極め、実践し続けることが、健康のために大切だ。
エビデンスは日本語で「科学的根拠」と訳され、確かな根拠があるものというイメージがあるかもしれない。しかし、実際の科学の世界は意外なほど白黒がはっきりせず、エビデンスには質による強弱がある。
エビデンスはわかりやすくまとめられていると思われるかもしれない。しかし、何十本もの論文を読んでようやくその分野の最新の知見やエビデンスの強弱、すなわち質の良し悪しがわかるようになる。
研究の質を高めるためには、膨大な文献を読み、研究者同士で議論を重ねるといった地道なプロセスが求められる。その一つひとつの研究結果の情報をまとめた科学的な証拠の集合体がエビデンスだ。
日本人の死因は、がん、心疾患、脳血管疾患が半数を占めている。一方、病気の原因をさかのぼって健康を害するリスク(危険因子)に着目する「公衆衛生(パブリックヘルス)」の観点で見ると、たばこ、食事、運動、アルコール、ストレスに関連するものがほとんどだとわかる。
本書は「生活習慣病」という言葉を避け、「慢性疾患」と表現している。「生活習慣病」と言うと、「生活習慣を改善できないことが原因となり、病気になるのは自己責任」とする考えにもつながる。しかし、人々の健康の決め手となる要因は、収入や教育レベルも含めた社会・経済的状況や、住む場所、学校・職場などの「環境」の要因が大きい。
したがって、個人の努力だけで健康的な習慣を身につけるために生活習慣を改善できなかったとしても不思議はない。それが、パブリックヘルスの考え方だ。
健康とは、「単に病気がない状態ではなく、肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあり、幸せや生きる意味を見出しながら、満ち足りた状態で生きること」である。その実現のために、健康習慣づくりに役立つ科学的なエビデンスを学ぶことが大切だ。
健康のための簡単な生活習慣として、健康的な食生活、定期的な運動、健康的な体重の管理、ほどほどの量のアルコール、たばこを吸わないことという5つを守れている人は少ない。新たな薬や治療法の開発によって様々な病気が治るようになったのに、人々の生活習慣は概して不健康なままである。社会経済的な状況、環境に影響されてしまうため、個人が健康のために生活習慣を変えるのは難しい。
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