ほんとうの心の力

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ほんとうの心の力
出版社
出版日
2006年06月09日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ニューソート思想」という言葉がある。これは19世紀後半からアメリカを中心に流行していった思想で、これまでのキリスト教の思想とは異なるという意味で「New Thought(新しい思想)」と名付けられた潮流だ。おおまかに言えば、それまでの禁欲的で画一的なキリスト教の規律を離れ、個人の心のありようが現実を変えていくと考えたところに特徴があると言っていいだろう。「引き寄せの法則」という言葉は有名なものだが、いわゆる自己啓発の源流にあるのがニューソートということになる。そしてこうした思想を発展させたものが、後にスティーブ・ジョブズなどにも影響を与えたニューエイジ思想である。

著者である中村天風は、こうしたニューソートにヨガなどの東洋思想を組み合わせ日本に紹介した人物であり、ニューエイジの先駆者と捉えることができるだろう。心がすべてを決めるという思想は、現代の感覚からすると、ともすれば非科学的に聞こえてしまうかもしれない。しかしニューソートはキリスト教の批判を契機にし、それを引き継いだニューエイジもまた現代文化への批判としての側面を強く持っている。

現代という時代は、物質的なもの、肉体的・社会的な欲望を追求することで、消費を生み出すサイクルによって駆動されている。こうした状況にいかに向き合うかを考えるとき、中村天風の言葉はきっとヒントを与えてくれるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

中村天風(なかむら てんぷう)
1876年(明治9年)7月30日、東京府豊島郡(現東京都北区王子)で生まれる。本名、中村三郎。1904年(明治37年)、日露戦争の軍事探偵として満州で活躍。帰国後、当時死病であった奔馬性肺結核を発病したことから人生を深く考え、真理を求めて欧米を遍歴する。その帰路、ヒマラヤの麓でヨガの聖者カリアッパ師の指導を受け、病を克服。
帰国後は実業界で活躍するも、1919年(大正8年)、突如感ずるところがあり、社会的地位、財産を放棄し、「心身統一法」として、真に生きがいのある人生を生きるための実践哲学についての講演活動を始める。同年、「統一哲医学会」を創設。政財界の有力者をはじめ数多くの人々の支持を受け、天風哲学として広く世間に認められるようになる。昭和15年、統一哲医学会を天風会と改称。昭和37年、財団法人の設立許可を受け、現在にいたる。
1968年(昭和43年)12月1日逝去、享年92歳。著書『真人生の探究』『研心抄』『研心抄』『錬身抄』他。

本書の要点

  • 要点
    1
    幸福も不幸も、すべてを決めているのは人間の心である。自分の感じる世界を変えていこうとするならば、心を変えていかなくてはならない。
  • 要点
    2
    消極的な心を持っていると、現実さえもよくないものに思われてくる。どのような状況でも自然に積極的な心を保てるようになることこそが幸福への道である。
  • 要点
    3
    言葉の力は大きい。消極的な言葉ばかり使っていると、心も消極的になってしまう。積極的な言葉を使っていくことで心を前向きにすることが、人生を幸福にしていくことにつながる。

要約

【必読ポイント!】 運命をひらく

心は秘密の玉手箱

人生を改善したり幸福を手に入れたりするためには、心の働きをスムーズにしなくてはならない。人間の心の中の思い方や考え方、いわゆる「思念力」には、ほとんど魔力と言っていいようなすごい力がある。

にもかかわらず、もっと幸福になりたい、もっと恵まれた人生を生きたいと思うのは、心が持っている力を忘れているからである。人間の地獄と極楽をつくり、悲劇と喜劇を感じさせるのは心にほかならない。心は秘密の玉手箱なのである。

言葉ほど暗示力を持つものはない

人間が日々使っている言葉には強烈な暗示力があり、現実を左右する力がある。このことを完全に理解し、これを応用して生きる人こそ人生哲学の第一原則を会得した人だといえる。

我々は言葉という武器を運用し応用することで、自己の運命や健康を守ることができる。そのためには常に言葉に厳重な注意を払い、いかなるときにも積極的な言葉を使っていかなければならない。

困難に出会ったとき

苦しみも微笑みに
maruco/gettyimages

人の運命というものは、油断すると本能と手を組んで歩こうとする。悲しい、つらいといった感情は、自己の本能の分別ない行動である。だからこそ、それを正しく制御しなくてはならない。

すべての消極的な出来事は、我々の心の状態が生み出している。どんなときにも心を明朗に、苦しみをほほえみに変えていけば、悲しいこと、つらいことのほうから逃げていくものである。

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要約公開日 2023.07.01
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