「直感」「読み」「大局観」。棋士はこの3つを使いこなして対局に臨んでいる。「読み」は計算する力である。若い頃は「読み」を中心に考えるが、年齢や経験を積み重ねていくと、感覚的に捉える「直感」と「大局観」にシフトしていく。
ゼロサムゲームでは半分の人が負け、半分の人が勝つ。たとえ勝ったとしても、勝者が手に入れるパイも小さい。こうした状況では、勝ち負けとは違う基準で得られるものを探すことが重要である。勝つことだけに固執してしまうと、成長が止まってしまうことになりかねない。
どんな状況でもベストを尽くし、結果に責任をもつ。そうして才能を磨き続ければ結果は返ってくるはずだ。進歩し続ければアイデアや発想は自然と湧き出るようになり、その中の優れたものを実戦で使うこともできるだろう。
そうした進歩のプロセスにおいてひとつの指針となるのが「直感」である。直感が浮かび上がってくると、「次に何をすべきか」がハッキリと見えてくるのである。
直感とは何だろうか。対局中ひとつの局面で「この手しかない」と最善手がひらめくときがある。時間が限られている勝負の場面では、蓄積された思考の束から最前手を見つけ出す必要がある。直感とは、これを繰り返し行うことで脳の回路が鍛えられ、論理的な思考が昇華した結果である。
著者は直感を「羅針盤」に例えている。航海中に嵐に直面したとき、突如2、3のルートをひらめくことがある。これが直感だ。そしてそのルートの中から最善のルートを決断するのが思考の役割である。
直感は何もないところからふと湧いて出てくるようなものではない。直感を導き出すには何度も思考を重ね、経験を蓄積しなければならない。また、経験から直感を引き出す訓練も常日頃から行う必要がある。
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