直感力

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直感力
出版社
出版日
2020年12月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、わかっているようで実はよくわからない「直感力」について書かれている。私たちは、一つひとつの判断について深く考えるようなことはしない。にもかかわらず、後から「最善だった」と思える選択をすることがある。慣れ親しんだゲームをしているとき、瞬間的に最適な行動がひらめいたことはないだろうか。道に迷ったとき、「こっちに行くべきだ」と答えがどこからか降りてきたことはないだろうか。「これが正解だ」と感覚的にはわかるのだが、なぜその判断に至ったかは説明することができない。

この捉えどころのない「直感力」を言語化したのが、天才棋士の異名をとる永世七冠・羽生善治氏である。対局中にふと浮かび上がる最善手、それが何からもたらされるのかを、自分の経験と鋭い洞察によって説明している。羽生氏は、直感とは何もないところからふっと湧き出てくるものではなく、蓄積された経験や知識、そして論理的思考から導き出されるのだと言う。つまり、直感力は誰でも鍛えることができるのだ。

本書では、羽生氏が日々どのようにして直感力を磨いているのか、また直感力を高めるにはどうしたらいいかが余すところなく紹介されている。また、勝ち続けるために行っている行動習慣や好きなことを見つける方法など、将棋ファンならずとも興味深いエピソードも満載だ。

一流の羽生氏によって語られる「一流の直感力」。知的好奇心をくすぐる刺激的な一冊である。

著者

羽生善治(はぶ よしはる)
1970年、埼玉県生まれ。将棋棋士。小学6年生で二上達也九段に師事し、プロ棋士養成機関の奨励会に入会。奨励会の6級から三段までを3年間でスピード通過。中学3年生でプロ棋士四段。1989年、19歳で初タイトルの竜王位を獲得。その後、破竹の勢いでタイトル戦を勝ち抜き、1994年、九段に昇段する。1996年、王将位を獲得し竜王、名人、王位、王座、棋王、棋聖と合わせて「七大タイトル」すべてを独占。「将棋界始まって以来の七冠達成」として日本中の話題となる。2012年7月、大山康晴十五世名人の持っていた生涯獲得タイトル数80期を超えて、歴代一位となった。2017年には竜王通算7期により永世竜王の資格を獲得し、永世名人(十九世名人)、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖の資格とあわせ、史上初の「永世7冠」となる。2018年2月、将棋界では初の国民栄誉賞を授与される。2019年6月、大山康晴十五世名人の記録を27年ぶりに塗り替え、歴代単独1位となる通算1434勝となった。
著書に『瞬間を生きる』(PHP研究所)、『決断力』『大局観』(以上、角川新書)、共著に『人間の未来 AIの未来』(講談社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    複数の選択肢の中から「これしかない」という最善手をひらめくことがある。これが「直感」である。直感は何もないところから偶然出てくるものではなく、経験や知識、論理的思考の蓄積によって導き出される。
  • 要点
    2
    創造的な思考や深い集中力を生み出すには、頭の中に空白状態をつくることが大切だ。散歩などをして、あえて「考えない」時間をつくるといい。
  • 要点
    3
    人間が進歩するには、創造性と情報処置能力をバランスよくもつことが重要だ。
  • 要点
    4
    どんなことも、最終的には自分で考える覚悟が必要だ。自分で調べ、考えて、自分で責任をもって判断する姿勢をもたないと、望まぬ場所へ流されてしまう。

要約

【必読ポイント!】直感力

成長のプロセスに必要な「直感」

「直感」「読み」「大局観」。棋士はこの3つを使いこなして対局に臨んでいる。「読み」は計算する力である。若い頃は「読み」を中心に考えるが、年齢や経験を積み重ねていくと、感覚的に捉える「直感」と「大局観」にシフトしていく。

ゼロサムゲームでは半分の人が負け、半分の人が勝つ。たとえ勝ったとしても、勝者が手に入れるパイも小さい。こうした状況では、勝ち負けとは違う基準で得られるものを探すことが重要である。勝つことだけに固執してしまうと、成長が止まってしまうことになりかねない。

どんな状況でもベストを尽くし、結果に責任をもつ。そうして才能を磨き続ければ結果は返ってくるはずだ。進歩し続ければアイデアや発想は自然と湧き出るようになり、その中の優れたものを実戦で使うこともできるだろう。

そうした進歩のプロセスにおいてひとつの指針となるのが「直感」である。直感が浮かび上がってくると、「次に何をすべきか」がハッキリと見えてくるのである。

直感とは何か
Creativeye99/gettyimages

直感とは何だろうか。対局中ひとつの局面で「この手しかない」と最善手がひらめくときがある。時間が限られている勝負の場面では、蓄積された思考の束から最前手を見つけ出す必要がある。直感とは、これを繰り返し行うことで脳の回路が鍛えられ、論理的な思考が昇華した結果である。

著者は直感を「羅針盤」に例えている。航海中に嵐に直面したとき、突如2、3のルートをひらめくことがある。これが直感だ。そしてそのルートの中から最善のルートを決断するのが思考の役割である。

直感は何もないところからふと湧いて出てくるようなものではない。直感を導き出すには何度も思考を重ね、経験を蓄積しなければならない。また、経験から直感を引き出す訓練も常日頃から行う必要がある。

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要約公開日 2023.08.03
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