人生の道しるべになる 座右の寓話

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人生の道しるべになる 座右の寓話
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2023年05月26日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

初めて会った人と「座右の銘はなんですか」という話になることはしばしばある。

いつも自分のそばに置いて、繰り返し確認したくなる言葉。要約者は「一事が万事」を大事な言葉のひとつとして、たびたび思い返す。会社の上役から戒めとセットでもらった、思い出深い言葉である。

座右の銘は短いワンフレーズだからこそ、すぐに取り出して使いやすくもある。一方、「おはなし」にも大きなパワーがある。たとえば「わらしべ長者」は「そんなうまい話があるわけがない」と思いつつ、どこかで「もしかしたら、自分の行いがどこかで報いるかも」と希望を抱くことができる。

人間関係の悩みも人生における大きな決断も、同じ境遇を経験した人が周囲にいれば幸運だが、ロールモデルのような存在に出会えることは稀だろう。そんなとき「座右の寓話」があると心強い。「人生は苦難の連続だ」と感じている人にはグリム童話の「寿命」を、「世の中の価値観に合わせて生きるのが辛い」という人には「幸運なハンス」を贈りたい。また、世界的ピアニストであるルービンシュタインの「人生後半の戦い方」は、人生100年時代を生きる私たちに勇気を与えてくれる。

本書は『ものの見方が変わる 座右の寓話』に続く「座右の寓話」シリーズの第2作である。本作では寓話に加え、近代以降の実験研究や偉人の逸話なども収録されている。

「座右の書」としていつでも手が届くところに置いておくと、あなたの人生の万事とはいかずとも、必ず一時の助けとなるはずだ。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

戸田智弘(とだ ともひろ)
1960年愛知県生まれ。
北海道大学工学部・法政大学社会学部卒業。
著書に『働く理由』『続・働く理由』『新! 働く理由』『学び続ける理由』『ものの見方が変わる 座右の寓話』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『海外リタイア生活術』(平凡社新書)、『就活の手帳』(あさ出版)、『「自分を変える」読書』(三笠書房)、『読めば読むほど知恵が身につく まほうの寓話』(幻冬舎)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    寓話は〈教え〉を物語が包み込んだものである。楽しみながら学び、教えを理解することで「寓話は人生の道しるべ」になる。
  • 要点
    2
    「仕事はつまらない、遊びは面白い」という偏見から自由になることが、幸せを感じるための第一歩である。
  • 要点
    3
    「世間の価値観」は絶対ではない。自分の価値観に従って生きることで、自分らしい幸せが見つかる。
  • 要点
    4
    ピアニストのルービンシュタインが高齢になっても活躍できたのは「SOC理論」を実践していたからである。

要約

人生の道しるべになる「おはなし」

寓話の魅力と読み方
rudi_suardi/gettyimages

寓話は、教訓や知恵などの〈教え〉を楽しみながら吸収できる点に魅力がある。寓話は核に〈教え〉があり、物語がそれを包み込む「二重構造」をしている。なぜそのような構造をしているかは、次の3つの理由が考えられる。

1つ目は、説教臭さが減ることである。私たちは年齢を問わず、説教されると拒否感を抱く。しかし物語なら喜んで聞き、その中から〈教え〉を楽しみながら見つけ出そうとするものだ。

2つ目は、〈教え〉が理解しやすくなることだ。「勇敢であれ」と言われてもその意味をつかむのは難しいが、具体的に物語で表現されるとわかりやすくなる。

3つ目は、物語に入り込むことで〈教え〉がより強く心に刻まれることである。主人公への共感や反発など、さまざまな感情が沸き起こることで、記憶にも残りやすくなるからだ。

人生は後戻りできない旅である。青年期から熟年期まで、誰もがその段階の初心者として毎日を生きている。知らない道を歩くときに道路標識が役に立つように、〈道しるべ〉は我々にも有益だ。よく生きるための〈教え〉が凝縮されている寓話は〈人生の道しるべ〉になるだろう。

本書では寓話(教訓を込めた作り話)のほか、逸話や昔話、神話、実験研究、思考実験など、何らかの〈教え〉のある77の「短いおはなし」が著者の見解とともに紹介されている。要約ではそこから7つの「おはなし」を抜粋する。

人生の時間の使い方

人間の一生 ~グリム童話「寿命」

グリム童話の「寿命」という話から始めよう。

神様は世界を創った後、すべての生き物の寿命を定めることにした。最初にやってきたロバには30年の寿命を与えようとしたが、ロバは「朝から晩まで重い荷物を運ぶ私には、30年は長すぎます」と訴えた。神様はロバに18年の寿命を与えることにした。

その後に現れた犬と猿にも30年ずつ与えようとしたが、どちらもそれを拒否した。犬は「私がどれだけ走るか知っていますか。私の足は30年ももちません」。猿は「人間を笑わせるために、30年もおかしな真似をするのはつらいです」と訴え、犬は12年、猿には10年の寿命が与えられた。

最後に現れた人間に神様は「30年の寿命で十分か」と聞くと、人間は「そんなに短いんですか?」と驚いた。人間は「自分の家を建て、ようやく人生を楽しもうってときに死ぬのはあんまりだ。もっと寿命を延ばしてください」と懇願した。そこで神様はロバの18年をやろうとしたが、「まだ足りない」と言う。神様はさらに犬の12年、猿の10年を付け足して、人間は70年生きることとなった。

人の一生には、楽しいことも苦しいこともある。この物語は、人生の苦しい部分をロバの運命、犬の運命、猿の運命と重ねている。30年を過ぎた後の18年は、ロバのように重い荷物(家族や仕事)を背負って働かなければならない。次の12年は、働かされ続けた犬のように身体が衰えていく。最後の10年は頭のはたらきが鈍くなり、猿のように間抜けになって笑いものとして生きなければならない、ということだ。

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要約公開日 2023.08.23
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